『SLAM DUNK』大人になって良さが分かった…当時はあまり注目していなかった“男前なサブキャラ”たちの画像
『SLAM DUNK THE MOVIE』Blu‐ray (TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D))

 漫画のキャラクターに“本気で恋をした”という話はよく聞く。昨年、映像作品としては26年ぶりの復活となった『SLAM DUNK』(井上雄彦氏)からは、湘北高校ルーキーの流川楓やシューターの三井寿に心を奪われた人も多いのではないだろうか。

 誰もが憧れる“男前キャラ”が多いのは本作の特徴の一つだが、大人になってから良さが分かるような、今思えば実は男前だったサブキャラも多い。たとえば湘北高校バスケ部を陰で支え続けた副キャプテンの木暮公延や、主人公の桜木花道を誰よりも理解して寄り添い続けた、水戸洋平を筆頭とする桜木軍団の面々だ。同様のキャラはほかにも数多いが、今回はそのなかから何人かピックアップして紹介したいと思う。

■泥にまみれ自分を活かす道を見つけた魚住純

 まずは、陵南高校キャプテンの魚住純。桜木から「ボス猿」と呼ばれているとおり、猿系の顔と2メートル越えの大きな体が特徴だ。

 彼は決して特別な選手ではなく、天賦の才といえば身長くらい。そのため「デカいだけ」と陰口を叩かれて涙を流したこともあったが、田岡監督の期待に応えるため厳しい練習に耐え、やがて高い評価を得るようになった。

 しかしライバルである赤木剛憲を前に才能の壁にぶち当たった魚住は、最終的にチームのために体を張る脇役に徹する決断をした。一般的にはまだまだ自分が主役でいたい10代後半で「俺は主役じゃなくていい」という境地に至るまで、いったいどれほどの苦しみがあったことか。かつて注目された選手であれば、なおさらだろう。

 さらにインターハイ優勝の夢が潰えた後は、山王戦で自分と同じく打ちひしがれた赤木を励ます側に回る。板前の格好で大根のかつら剥きをして「泥にまみれろよ」と言う、あの有名なシーンだ。

 気持ちとしては熱いものがあるだろうに、そこであえて“静かにかつら剥きをする”というのが、なんとも素敵ではないか。もしかして魚住自身も、板前修業で刺身のツマを作っているときに、それを自分の姿と重ね合わせたことがあったのかしら、とイメージが膨らむ。いずれにしても、不器用で温かい人となりが何となく伝わってくる。

 彼は決して子どもウケする華やかなキャラではないが、若くして挫折と葛藤を乗り越える芯の強さと、ライバルを我が事かのように応援できる器の大きさを持ち、そしてバスケをやり遂げた後は父の跡を継いで板前になるという昔からの夢に向かって邁進している。このいぶし銀のような魅力が、大人の心には刺さるのではないだろうか。

■“バカ”がつくほど一本気な青田龍彦

 続いて、赤木と幼馴染の柔道部主将・青田龍彦を紹介したい。

 桜木との絡みから“バカ・短足”などと散々なイメージがついてしまった青田だが、柔道では全国大会進出を果たした実力者だ。赤木がバスケ一筋に打ち込むのと同様、柔道一筋に打ち込んできた骨のある男で、赤木もそのあたりは認めている様子。

 また、小学生時代に一目惚れした赤木の妹・晴子をいまだに思い続ける一途さや、何度断られても桜木を柔道部に勧誘し続ける粘り強さもすごい。このあたりは作中ではコミカルに描かれているが、実際ここまで一本気に突き進めるというのは一種の才能であり、何物にも代えがたい素質ではないかと思う。

 2年生までチームメイトに恵まれなかった赤木にとっては、青田のように自分と同じ熱量で何かに打ち込む友人は、畑こそ違えど大きな支えになっていたかもしれない。

 地区大会での陵南戦では、一足先に全国への切符を手に入れた青田からの喝に対し、赤木が見せた表情は何とも印象的だった。青田もまた、試合終盤で木暮が見せた活躍に対して感慨深げな表情を見せている。この一コマで、普段バスケ部にしょうもない張り合いをしてくる青田が、彼らを気にかけて見守り続けてきた本音が垣間見える。

 柔道が強くて、一途で、仲間想い。まるで一昔前の映画の主人公のような、“昭和のイイ男”といったイメージだ。

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