漫画やアニメには、主人公やその仲間たちがチャンスやピンチを迎える場面において、ジリジリさせられる展開のために、作中で実際に流れているよりもかなり長い時間に感じてしまうことがある。そう感じてしまうのは、相手に付け入る隙を与えたくなかったり、このままではやられてしまうと切羽詰まっていたりする、一刻を争う状況が描かれているからだ。
そして、ほんの一瞬が永遠にも思えるような緊迫した時間を乗り越えるからこそ、充分な達成感や満足感が得られるとも言える。
そこで今回は、漫画やアニメの中から「時間の経つのが遅く感じてしまった」シチュエーションを紹介していきたい。
■『ドラゴンボール』ギニュー特戦隊との戦いで悟空がナメック星に駆けつけるまで
鳥山明氏による『ドラゴンボール』(集英社)には、強大な敵キャラクターが次々に登場するため、絶望的な状況に陥ってしまうことが何度もある。フリーザの配下であるギニュー特戦隊とのナメック星での戦いもそのひとつだ。
隊長のギニューをはじめ、リクーム、バータ、ジース、グルドの5人で構成される特戦隊は猛者揃い。特殊な能力を持つグルド以外はベジータをも上回る戦闘力を有する。
そして、いざ戦いが始まるとベジータとクリリン、悟飯の3人はリクーム1人によって追い詰められることになってしまった。しかしその一方で、この時には悟空がナメック星到着まであと2分というところまで迫っており、悟空ならギニュー特戦隊になど負けない! と信じていた読者は、リクームとの戦いを歯がゆい気持ちで見守るしかなかった。
考えてみれば、そんな状況になってしまったのはブルマの父であるブリーフ博士のせいだとも言えるだろう。悟空がナメック星に飛び立つ前に、ブリーフ博士が宇宙船内のステレオスピーカーの位置にこだわり、出発が多少遅れてしまったからだ。それさえなければ悟空はきっと余裕を持ってナメック星に到着していたはずで、ギニュー特戦隊との戦いも違った様相になっていたことだろう。
■『新世紀エヴァンゲリオン』ポジトロンスナイパーライフルを再発射するまで
TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』第六話での第5使徒ラミエルとの戦いも、かなりジリジリとする展開だった。接近戦では倒すのが困難なラミエルを遠距離から攻撃するため、日本全土の電力を集めて、それをポジトロンスナイパーライフルに集結させて発射する「ヤシマ作戦」が採用される。
この作戦は、的を外してしまうと再発射まで時間が掛かってしまうので、逆に再発射を待つ間を狙われると無防備な状態で攻撃を受けなければならないというリスクがあった。それを防ぐため、レイの零号機による防御用の盾でバックアップする作戦が立てられた。実際に作戦が実行されると、シンジの初号機はラミエルへの初撃を阻まれてしまう! すると、間髪入れずにラミエルの攻撃が飛んできて、零号機が盾で受け止める。
ラミエルの攻撃力は凄まじく、盾がチーズのように溶けてしまう。シンジは次の一撃を発射させるために待っているが、なかなか電力が溜まらない。このままでは零号機が保たない……と思わず息を呑む展開だ。しかし間一髪のところで電力が溜まり次の一撃を放つことができ、初号機はラミエルの殲滅に成功した。
再発射までの時間はレイのことを見殺しにしてしまうかもしれないという焦燥感で、心の中で何度も「早く! 早く!」と叫んでしまった。何もできずに待つことしかできない状況だったシンジと気持ちがシンクロしていたのだろう。