■『NARUTO』イタチ「このオレを殺したくば 恨め! 憎め! そしてみにくく生きのびるがいい」

 岸本斉史氏による『NARUTO −ナルト−』(集英社)にも、敵でありながらあえて嘘をつくキャラが存在する。それがサスケの兄のイタチだ。

 イタチは天才と呼ばれ将来を期待された忍だが、サスケを残して一族を皆殺しにした大罪人となる。その事件をきっかけに、サスケはイタチに復讐することだけを考えて生きていたのだ。

 そんなサスケに対してイタチは力の差を見せつけると、「このオレを殺したくば 恨め! 憎め! そしてみにくく生きのびるがいい……」と言い放つ。どうしてそこまでサスケを煽るのか?と、最初は理解ができなかったが、のちにその意味が明らかとなる。

 イタチはサスケが自分を殺すことで、里の英雄になることを望んでいた。これまでのうちは一族は忌み嫌われる存在だったため、それをサスケに一蹴してもらうためにもあえて悪役になったのだ。しかも一族の虐殺も、父親たちが起こそうとしていたクーデターを止めるため。ちゃんとした理由があったのだ。

 イタチは弟思いの優しい兄であり、誰よりも平和を望む優しい心の持ち主だった。それをずっと隠して憎まれ役を演じていたイタチの本心や真相を知った時には、思わず感動してしまった。だからこそ、亡くなってしまったことが残念でしかない……。生きて先の活躍を見たかったキャラクターの1人である。

 

 バトル漫画に登場する優しい嘘の背景には、命を賭けた優しさが存在する。相手を想う気持ちが強いからこそ、自分の身がどうなっても構わない……そういう覚悟もあるのだ。そんな嘘によって救われたキャラも多いだろう。

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