『ドラゴンボール』亀仙人に『北斗の拳』ラオウも…バトル漫画に登場した“優しすぎる嘘”の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳【究極版】』10巻(徳間書店)

 バトル漫画には、相手のことを気遣ってあえて嘘をつくシーンがある。仲間を心配させまいとするためだったり、相手を奮い立たせるためなど、理由はさまざまだ。そして、場合によっては嘘が伏線にもなっていたりして、のちに「そうだったのか……」と感心してしまうこともある。

 作中でも良いスパイスになる数々の“嘘”。今回は、キャラたちが発した優しすぎる嘘をテーマに、いくつか紹介していきたい。

■『ドラゴンボール』亀仙人「不老不死の水をのんでおるからのう」

 鳥山明氏による『ドラゴンボール』(集英社)といえば、世界中で大人気のバトル漫画だ。作中にはいくつもの手に汗を握るようなバトルが展開され、先が気になってどんどん読み進めてしまった経験がある人も多いだろう。

 そんな『ドラゴンボール』にも、優しい嘘をついたキャラが登場する。それが亀仙人だ。

 亀仙人といえば女性に目がなく、いつもふざけているようなイメージが強いのだが、実はやる時はやる男でもある。

 ピッコロ大魔王復活時、亀仙人は天津飯らとともにピッコロ大魔王のもとへと向かう。玉砕覚悟で戦おうとしていた天津飯だったが、亀仙人はそれを制止し「わしは死にはせんよ 不老不死の水をのんでおるからのう…」と、彼に睡眠ガスを吹きかけた。

 意識を失った天津飯を岩陰に隠しながら「不老不死の水などありゃせんよ…うそじゃ…」「もし…わしが死んだら」「いつの日かきっとたおしてくれい」と言う亀仙人。これから命を落とす覚悟を持っていながらもなお、万が一のことを考え、若き戦士を未来への希望として生かしたのだ。

 そんな男気を見せる亀仙人の姿は、滅多に見られない。あの頃のピッコロ大魔王といえば、恐ろしさと次元の強さを持つ存在だったので、それに一人で立ち向かおうとする彼の姿が凛々しく見えたのを今も覚えている。

 命を掛けた魔封波が失敗に終わってしまったのは残念だったが、あの時の亀仙人の男気があったからこそ、のちの悟空とピッコロ大魔王の勝負が盛り上がったのは間違いない。

■『北斗の拳』ラオウ「生まれて初めて女を手にかけたわ…」

 原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏による『北斗の拳』(集英社)では、敵があえて優しい嘘をつく場面があるのだ。それはケンシロウの最大の宿敵ラオウで、ユリアを巡っての戦いの中で起こった。

 ケンシロウは、ラオウに奪われたユリアを取り戻すために彼のもとへと向かう。そこにはユリアの姿があったが、しかし、彼女の心臓は止まり息をしていなかった。ラオウは「生まれて初めて女を手にかけたわ…」と言い放ち、それによって北斗神拳の究極奥義である“無想転生”を手にしたことを告げる。

 このシーンには、「せっかくユリアとケンシロウが再会できたのに……!」と愕然とした読者も多かっただろう。しかし、ラオウは単純にユリアの命を奪ったりはしていなかった。

 ラオウはユリアの病気を知り、その病気の進行を止めるためにあえて仮死状態にする秘孔を突いていた。それによって、余命数カ月だったユリアの命を数年まで延命。ケンシロウがラオウとの決着後に、ユリアと幸せな時間を過ごすことができたのも、ラオウの優しさがあってこそだろう。ラオウの嘘には、ユリアはもちろん、ケンシロウへの愛まで感じられる。

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