■能力説明時の文字の多さは定番!? 文字量を逆手に取った作品も…
冨樫義博氏による『HUNTER×HUNTER』でもセリフが多い回が随所に登場する。それはたいていの場合、同作品の象徴的な能力である「念能力」について説明されるシーンだ。
たとえば第388話では、1ページに描かれた7コマ中5コマがほとんど文字のみで埋められている。パッと見たところ、そのページはまるで挿絵つきの小説のようだ。このほか381話でもキャラクターのモノローグの文字量がかなり多く、キャラの顔が吹き出しで隠れてしまうほどだった。
文字だらけのページが出てくると諦めて読み飛ばしてしまう人もいるかもしれないが、こうした文字量の多さは緻密に練られた作品の魅力につながっている。作品独自の設定や能力や概念は、どうしても作品の中でわかりやすく語られなければならないからだ。
よってこちらも推理作品同様、読者のために丁寧にロジックを説明していると言える。
しかし、1ページあたりにおける文字の多さが読者にある種のストレスを与えることを逆手に取った作品もある。
原作:西尾維新氏、作画:暁月あきら氏による『めだかボックス』の60話に登場した江迎怒江(えむかえ・むかえ)はヤンデレキャラなのだが、作中、彼女のその性格を大量の文字によって表しているようなシーンがあった。
人吉善吉に一目惚れした江迎は、吹き出しの中で限りなく小さな文字でびっしり書かれたセリフで彼への愛を語る。このように表現するとまるで江迎が一息でこの膨大なセリフを語っているように見え、その行きすぎた愛情表現に彼女のヤバさを感じるのだ。
文字が多いことで読者が「ウッ」となるのをうまく利用した表現の例だと言っていいだろう。
どの漫画も、隅から隅まで理解して読むほど作品への解像度や理解度が高まる。文字の多さに拒否反応を起こしてしまいがちではあるが、じっくり読めばさらに作品の面白さを感じられるかもしれない。