■ラオウ編で終わるはずだった!? 『北斗の拳』

 さて、昭和の作品で第1部の終わりがあまりにも見事だったのは、武論尊氏原作、原哲夫氏作画の『北斗の拳』だろう。

 同作はケンシロウが宿敵・ラオウを倒すまでが第1部、その後、修羅の国編でラオウの実兄・カイオウとの決着をつけるまでが第2部である。終章ではケンシロウは次代の北斗神拳伝承者にラオウの遺児・リュウを選び、最後の敵・ボルゲと戦う。

 ずば抜けたカリスマ性があり、その壮絶な最期や「我が生涯に一片の悔いなし」というセリフが印象的だったラオウ。彼のインパクトがあまりに大きかったために、第1部の内容しか覚えていないという人も多いかもしれない。それほどまでに、ラオウは宿敵として魅力的なキャラクターだったのである。

 またこれについては、作者サイドはケンシロウとラオウとの戦いで物語を完結させるつもりだったものの、当時の『週刊少年ジャンプ』編集部の意向により連載が延長されたという背景が当時のインタビューなどで明かされている。そのため、長きにわたるラオウとの戦いにようやく決着をつけたのも束の間、実際にはその翌週からすぐに続きを開始しなければならなかったようだ。

 本作ファンのあいだで、「ラオウまででよかった」「終章まであったからよかった」と、いまだに論争が起こりがちなこのテーマ。どちらにせよ、当時『北斗の拳』がいかに大人気だったかがわかるエピソードであろう。

 

 第2部以降ももちろん面白かったが、第1部の終わり方があまりにも秀逸だった漫画の数々。連載継続を嬉しく思うか蛇足と思うか、ファンのあいだでも意見は割れそうだ。

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