さまざまなキャラクターが登場する『機動戦士ガンダム』シリーズ。メインで描かれるのは主人公を始めとするモビルスーツパイロットだが、パイロット以外のキャラクターもそれぞれが自分の土俵で活躍し、魅力がたっぷりだ。
今回は、そんな『ガンダム』シリーズでも戦艦の操舵手にフォーカスしたい。一見地味なポジションだが、マニュアルを読んだだけで宇宙戦艦を操舵した『機動新世紀ガンダムX』のシンゴ・モリや、民間人でニュータイプの素養を匂わせる『機動戦士ガンダム』のミライ・ヤシマなど多くの名操舵手が存在する。
そして、ガンダムで名操舵手と言えばこの男、昨年放送開始から20周年を迎えたアニメ『機動戦士ガンダムSEED』シリーズのアーノルド・ノイマン。前置きが長くなってしまったが、ノイマンの操舵手としての魅力について紹介させていただきたい。
■大質量の戦艦でバレルロールを成功させるテクニック
まずは、ノイマンのテクニックについて紹介したい。ノイマンが操舵する戦艦は、地球連合軍所属のアークエンジェル。『機動戦士ガンダムSEED』の主人公、キラ・ヤマトの母艦だ。常に激戦に見舞われるものの、ノイマンの操舵テクニックのおかげで致命的な攻撃はほぼ回避していた。
特にとんでもないテクニックが、大気圏内でのバレルロール。バレルロールとは、簡単に言うと進行方向に対して360度側転する航空機の機動テクニック。現実世界の戦闘機やアクロバット機も実施するが、比べものにならないほどの質量を持つ戦艦で実施するのは並大抵のテクニックではない。さらに、無重力の宇宙ではなく、重力のある大気圏内でおこなうからまさにバケモノ級だ。
作中では、第23話「運命の出会い」で、ザフト軍と海戦を繰り広げたときに披露している。ザフト軍の水中モビルスーツ・グーンは、アークエンジェル直下の海中から攻撃をしかけてきた。位置的に有効兵器のないアークエンジェルは、バレルロールを実施。180度時点(逆さま)で、主砲ゴッドフリートでグーンを撃破し、そのまま360度回転した。ノイマンのとんでもないテクニックに脱帽した瞬間だ。
■経験不足の艦長をサポート
アークエンジェルの艦長を務めているのはマリュー・ラミアスだが、本来のマリューは技術士官。第1話「偽りの平和」でザフト軍から襲撃を受けた際に、正規クルーはほぼ全滅してしまい、成り行きから艦長となった。つまり、マリューは、艦長としての教育をほぼ受けていないと考えられる。実際に、ストーリーが進むにつれ艦長として成長したものの、当初のマリューには少し頼りない印象を受けた。
ほかのクルーにも支えられたとは思うが、やはりノイマンの功績は大きい。本来、戦艦が回避行動をとる際は、具体的な回避方向も艦長が指示する。しかし、マリューの指示はほとんどが「回避!」の一言。特に、ビーム兵器の場合、発射が確認されてからの回避は困難と考えられるためノイマンがある程度事前に予測しているのではないだろうか。
また『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の第34話「悪夢」では、突然目の前に現れた敵戦艦ミネルバの砲撃を回避した。マリューを始めとするほぼ全員が驚愕して行動できなかったが、即座の判断で回避行動をとる。しかも、アークエンジェルを90度傾けて回避する離れ業を披露。これにはミネルバも対応できなかった。