『鬼滅の刃』冨岡義勇に『ベルセルク』ガッツ…味方を安心させ奮い立たせる「任せろ!」が似合うキャラ3選の画像
ヤングアニマルコミックス『ベルセルク』第26巻(白泉社)

 漫画において緊張感あふれるバトルシーンが繰り広げられる中で、ひときわ心に響くセリフがある。キャラクターの信念を示すものや、価値観が異なる相手を諭すものなど、状況によって様々なセリフが読者の心を震わせてきた。その中でも「絶体絶命の状況で仲間を奮い立たせる言葉」は、それを口にするキャラクターのかっこよさを引き立て、バトルシーンそのものも、より印象的なものになることが多い。

 そこで今回は、絶望的な危機にあるにもかかわらず仲間に対して発せられた「任せろ」というセリフを特にピックアップして紹介していきたい。たったひとことの短いセリフだが、そこに至るまでの経緯を知ることで、ますますグッとくることは間違いないだろう。

■『鬼滅の刃』冨岡義勇

 4月9日からスタートしたTVアニメ「刀鍛冶の里編」が放送中の吾峠呼世晴さんによる漫画『鬼滅の刃』(集英社)では、水柱・冨岡義勇が頼りがいのある「任せろ」を披露している。

 同作で描かれる鬼殺隊と鬼との戦いは、わずかなミスによっても命を失ってしまう切迫した状況が連続する。力なき隊士は鬼の餌食となり、何もできないままに殺されてしまう。そんな中で唯一希望の光となっているのが、選ばれた剣士である柱たちが見せる人並み外れた剣さばきだ。

 主人公の竈門炭治郎も鬼殺隊の隊士として鬼と戦うが、那田蜘蛛山での下弦の伍・累との戦いは、絶体絶命の状況となる。追い詰められたことで覚醒した炭治郎は、「ヒノカミ神楽」を繰り出して累の首を切り落としたが、累はそれでも死なず、全力を出し切った炭治郎は死を待つしかなかった。そんな瞬間に「俺が来るまでよく堪えた 後は任せろ」と颯爽と現れたのが冨岡義勇。

 そして、圧倒的な自信がにじみ出るその言葉通り、冨岡は累を瞬殺してしまった。あれだけ炭治郎が苦戦した累を、まるで雑魚キャラでも扱うかのように斬り伏せ、多くを語らずここ一番という時に現れて淡々と自らの責務を果たした冨岡のカッコよさが引き立った名シーンだ。

■『ザ・ファブル』佐藤明

 南勝久さんによる『ザ・ファブル』(講談社)にも全てを任せたくなる男がいる。それが主人公である伝説の殺し屋、通称「ファブル」こと佐藤明だ。佐藤は殺し屋稼業を一時休業し、民間人として社会に溶け込んで平穏な暮らしを送ろうとしていたが、そんな佐藤を裏社会は放っておいてはくれず、次々にトラブルが舞い込んでくる。

 そんなトラブルの中のひとつに、犯罪集団の頭目である宇津帆と行動をともにしている佐羽ヒナコとの出会いがあった。ヒナコは両親を殺した犯人を見つけることを餌にされて宇津帆に従っていた。しかも事故によって車椅子生活となっていたヒナコは自由に動けないという境遇でもあり、宇津帆はヒナコを利用するだけ利用する。しかし、実はヒナコの両親を殺したのは宇津帆であり、それに気付いたヒナコはあらためて復讐を誓う。

 一方、かつてヒナコの事故の原因を作ったのが自分であることに気付いた佐藤は、ヒナコの身を案じて宇津帆に接触するが、逆に宇津帆も佐藤が「ファブル」であることに感づき、2人は戦うことになる。

 最終対決の場では、宇津帆は結果的に仲間であった殺し屋の鈴木ヒロシによって殺されることになったが、その際にヒナコは佐藤を待ち伏せるために宇津帆が仕掛けた地雷を踏んでしまい、絶体絶命の状況に陥ってしまう。そんな場面にあっても佐藤はうろたえることなく、地雷をショベルカーで抑え込み爆風を抑えつつヒナコを地雷から引き離す、という方法を思い付く。そして、ヒナコの足を引き抜く直前に佐藤は「まかせろ! 俺は速い――」と力強く宣言する。その姿には、佐藤なら絶対に助けてくれる! という気持ちにさせられたものだ。

 その言葉通り、ヒナコは無傷で地雷の爆風から逃れ、その後は普通の生活に戻っていく。佐藤の「まかせろ」には、それまで表に出すことのなかった佐藤の感情が込められていたようにも思える。いずれにしても、佐藤が変わるきっかけになった出来事には違いない。

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