■『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ヴァイオレット
京都アニメーション制作のTVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(原作:暁佳奈氏)は、劇場版も制作されるなど大きな話題を呼んだ作品。泣けるアニメとしても高い評価を受けた理由には、主人公ヴァイオレットの感情の変化、そして上官のギルベルトに対する一途すぎる想いが挙げられる。
軍人とその直属の部下という関係からスタートしたギルベルトとヴァイオレット。孤児として育ちギルベルトに拾われ、その類いまれな身体能力を見出され兵士として抜擢されたという経緯から、ヴァイオレットはギルベルトのためならいつでも命を捨てる覚悟を持っていた。戦場でギルベルトの命令を受けて先陣を切って敵を排除するその姿は戦闘人形と恐れられた。
戦争終盤には、ヴァイオレットは自らの両腕を失いながらもギルベルトを守り、窮地から逃がすために奮闘するなど、異常とも思えるほどの忠誠心を見せた。後にそれが忠誠心ではなく、ギルベルトを愛する気持ちだったということも分かるのだが……。銃弾が飛び交いそこかしこで爆弾が炸裂する極限の状況下で、両腕を失ってもなお折れることのない精神力の強さに圧倒されてしまう。
そんな健気な姿を見て、ギルベルトが涙を流してヴァイオレットを逃がす場面もまた感動的だ。ヴァイオレットは感情の表現の仕方が分からないからこそ、それが忠誠心なのか、愛なのかが分からなかったのだろう。いずれにしても、真っ直ぐすぎるヴァイオレットの行動はあまりにもまぶしすぎる。
強い忠誠心を発揮するキャラクターは、自己主張の強いキャラクターが数多く登場する漫画やアニメのバトルにあっては、逆にその特異性が際立って見えてくる。自分自身よりも他者、それも自らが仕える対象である特定の相手だけに向けられた強い感情がより一層引き立つからだ。さらに、今回最後に紹介したヴァイオレットがそうであったように、主従関係が男女であった場合などには、それが純粋な忠誠心なのか、はたまた愛情なのかといった機微も生まれてくる。忠誠心キャラはバトル漫画にドラマとしての深みを与える存在と言ってもいいだろう。