■『鉄腕アトム』に加山雄三版『ブラック・ジャック』

『サザエさん』に次いで早い段階で実写ドラマ化された作品といえば1959年の『鉄腕アトム』だろう。日本初の1話30分の連続テレビアニメ放送となった『鉄腕アトム』は1963年に放送されており、こちらもアニメに先駆けている。

 同作は特撮テレビドラマであり、冒頭には物語の設定を説明する75秒のセルアニメが放送された。ツヤツヤとした頭部やボディの質感が特徴的なアトムの姿は今見るとややシュール。しかし部を追うごとに衣装などが変わっていくのも見どころだ。

『サザエさん』同様、何度も実写化されているのが『ブラック・ジャック』。これまで映画1作、ドラマ4作が作られている。

 初のテレビドラマ化作品である1981年の加山雄三さんが演じた『ブラック・ジャック』の連続ドラマでは、内容が原作から大幅に変更されている。ブラック・ジャックは普段は銀座で画廊を経営する実業家・坂東次郎を名乗っており、必要なときのみ無免許医師という裏の顔を明かすというものだ。タイトルも『加山雄三のブラック・ジャック』と冠がついている。

 なお、宍戸錠さんが演じた1977年公開の映画版(大林宣彦監督『瞳の中の訪問者』)では、原作のブラック・ジャックの姿に似せようと顔半分の皮膚を青色で表現したため、原作者の手塚治虫さんが「こんな人間がどこにいる」と苦言を呈したというのは有名な話だ。

 知名度が高く、さまざまな世代から支持を集めた実写化作品といえば『スケバン刑事』だ。原作は『花とゆめ』(白泉社)にて1975年から1982年まで連載された漫画で、連載終了後の1985年に斉藤由貴さん主演で実写ドラマ化された。

 最近では女性をターゲットにした恋愛をメインテーマとした少女漫画を若手イケメン俳優と女優で実写化することが多いが、その流れは当時にはほとんどなかった。この作品以降、特に90年代に入ってからは、多様なジャンルの作品の実写化の流れが活発になったように感じられる。

 ここまで見てみると、実写ドラマ化は人気の原作がある漫画があるからこそ行われていたのだとわかる。またその内容はファンタジー要素のあるものは少なく、例え原作が少年漫画であっても内容が大人向けの漫画が実写化されることのほうが多かったようだ。

 実写化は日本のテレビ界が築いてきた伝統的な手法の1つといっていいだろう。

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