キャラクター名、技名、機体名……漫画やアニメには数々の印象的な“名前”が登場するものだが、それぞれのルーツをたどっていくと、思わぬ“名付け親”の存在が見えてくる。作品の“顔”として歴史に残る“名前”が付けられた経緯について、いくつか見ていこう。
■名前の由来は“デザイン”が似ているから!?…『機動戦士ガンダムF91』F91
1991年に劇場公開されたアニメ『機動戦士ガンダムF91』は、大人気ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』の映画化10周年を記念して作成された。
ガンダムシリーズを代表するモビルスーツ(以下MS)といえば、タイトルにもなっている「ガンダム」なのだが、本作では「F91(フォーミュラ ナインティワン)」のコードナンバーを持つ機体に、劇場版の主人公であるシーブック・アノーが乗り込むこととなる。
実は意外なことに、この「F91」は作中で正式に「ガンダム」というコードを与えられ開発された機体ではない。実は、艦長代理の女性、レアリー・エドベリによって“フェイスデザインが似ている”という理由から「ガンダム」の名を与えられたのだ。
つまるところ、見た目から「ガンダム」という愛称をつけられたことがきっかけで、アニメタイトルにもなっている「ガンダムF91」という機体名が誕生した……というわけである。
さらに深掘りしてみると、もともとこの機体を「ガンダム」として開発する計画もあったようなのだが、開発社の上層部が“ガンダム”という言葉に対し、“愚連隊同然の非正規部隊で運用される機体”という悪いイメージを抱いていたため、意図して「ガンダム」というコードを避けた……という背景も存在しているようだ。
さまざまな戦場で功績を残した機体であるだけに「ガンダム」という言葉に対して、当時の人々が抱いた憧憬や畏怖、希望や嫌悪といった多種多様な感情が見えてくるエピソードだ。
こういった背景から「ガンダム」の名を受け継いだ「F91」の活躍を、ぜひ劇場版で見届けてほしい。
■なんと“聞き間違い”から生まれた必殺技!『HUNTER×HUNTER』ジャジャン拳
1998年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が開始し、今なお根強いファンを獲得しているのは、冨樫義博氏の『HUNTER×HUNTER』だ。失踪してしまった父を探すため、“ハンター”を目指す少年・ゴンの戦いと冒険が描かれていく。
作中では戦いのなかで活用される“念”という概念が登場し、この念能力を利用した能力や必殺技が多く登場している。
そんななか、主人公・ゴンが修練の末に編み出した必殺技こそ、3種類の異なった効果を発揮する「ジャジャン拳」だ。
その名前の響きから連想できるように「じゃんけん」の概念をもとにしており、拳に集中したオーラを3つの型で放つことで用途を使い分けることができるというもの。拳で相手を殴りつける「グー」、指先に集中したオーラで切り裂く「チー」、掌からオーラを放出する「パー」と、近距離〜遠距離にかけて対応できる応用性が高い必殺技となっている。
実はこの大技、習得者であるゴン自身は、当初「ジャン拳」と名付けており、ネタ元となった「じゃんけん」と発音的には同じだった。
しかし、仲間の一人であるナックルに技名を聞かれた際、「ジャ…ジャン拳……!!」と回答に詰まってしまったことで、ナックルが勘違い。「じゃんけんと『必殺技をジャジャーンと出す!!』みたいな効果音とかけてるわけだ」と勝手に納得されてしまったことで、以降、「ジャジャン拳」の名を使うようになったのだ。
きっかけはちょっとした“聞き間違い”だったわけだが、それでいて絶妙に語呂が良い技名になったのは、なんとも面白い偶然である。勘違いで名付けられたとはいえ、以降もゴンの主戦力として活躍し続けている、実に印象的な必殺技だ。