■もしかして間に合ってた? 止まらないやきもき…

 最後に、アミバのエピソードで登場した家族のシーンを取り上げたい。義兄・トキの悪い噂を聞き、真相を確かめに行ったケンシロウ。ちょうどそのころ、トキになりすましたアミバのもとに、病に冒された子どもが運び込まれていた。秘孔を突かれた子どもは、痙攣したあとガクっと力をなくす。アミバは両親に“あと三時間で目を覚ます”と告げると、治療の見返りに実験台として死ぬよう父親に要求した。

 妻子を残して死ねないと必死に抵抗する父親だったが、強引に押さえつけられ、首にズブズブと指を差し込まれて悲鳴を上げる。ここでアミバが何か気配に気づいて衝立に刀を突き刺したところ、そこには敵を盾にしたケンシロウが立っていた。この満を持しての登場に、父親の生死にやきもきしていた読者はホッと一息ついたことだろう。しかしケンシロウがいきなり「なぜ子どもを殺した‼」と言ったものだから、子どもの死を知った父親は仇を討とうとアミバに襲いかかり、結局返り討ちに遭って殺された。

 それにしても、アミバが子どもを殺したと知っているのなら、もしかしてそのときすでにケンシロウは衝立の裏にいたのだろうか……また父親が襲いかかったとき、アミバとケンシロウは立ち話をしていた。もしかしたら助けに入ることができたのでは……など、“実は間に合っていたのではないか?”という疑惑が残る。

 ケンシロウはケンシロウで、トキが本物かどうか確信できずにやきもきしていただろうし、みんながいろんなことに気を揉んだシーンではないだろうか。

 

『北斗の拳』は今年で連載開始40周年を迎えるが、その人気はまだまだ健在だ。

 老人も子どもも家族を思う父親もみんな等しく、間に合わないときは間に合わない。そんな厳しい現実を描いているところも、本作ならではの魅力だろう。

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