■奇病に負けない熱い生きざまに惚れてしまう…『からくりサーカス』の加藤鳴海

 難病といえる架空の病気「ゾナハ病」に苦しむのが、藤田和日郎さんによる『からくりサーカス』(小学館)に登場する主人公・加藤鳴海だ。“近くにいる人を笑わさないと発作が止まらない”というまさしく奇病なのだが、その苦しみは想像を絶するほど。

 加藤は持ち前の正義感から「しろがね」と「オートマータ(自動人形)」の戦いに巻き込まれていくのだが、その途中で左腕を失ってしまい、大型の剣を仕込まれた義手を装着される。この剣はマリオネットの始祖でもある「あるるかん」の左腕なのだが、もともと中国武術の使い手でもある彼はこれを使いこなし、攻防一体でオートマータと互角の戦いができるようになるのだ。

 そして加藤はゾナハ病に苦しむ子どもたちを助けようと最終決戦に挑むのだが、その過程でなんと右腕と両足も失ってしまう……。生きるためにさらなるギミックを装着することとなるのだが、それでもオートマータたちとの戦いをやめない。これにはゾナハ病の研究施設が関係しているのだが、見ていてツラかったな。

 とくに印象に残っているのが、小児病棟に収容されている少年・マークとのシーンだ。消灯時間前、マークから絵を描いてほしいとせがまれた加藤は「明日また描いてやるよ」と何気なく約束をするのだが、これが結果的に自身を追い詰めることに……。ゾナハ病が進行した場合には、明日なんてないのだ……。

 それにしても加藤の生きざまは凄まじい。作者の前作『うしおととら』の主人公・蒼月潮と比較しても劣らない存在感だ。まあ、人を笑顔にできるヤツは強いもの。加藤のまっすぐな熱い生きざまには惚れてしまうぞ。

 

 さて、ギミックでも強い主人公たちを紹介してきた。3人ともまったくタイプが違うのだが、独特の強さを誇っている。これらの漫画を読み返していると、自分だったらどの世界観で生き残れるのだろうか……などと考えてしまう。

 ゾナハ病にはなりたくないが、ガッツの世界にも行きたくないし、そうなるとコブラの世界観が一番マシなのか。いや、でもあの設定もだれが敵か味方か分からないから、やっぱりどれも無理かもしれないな……。

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