■王位継承戦のアナザーストーリー? 第13王子・マラヤーム陣営「ウェルゲー」

 最後に注目したいのが、第13王子・マラヤームの警護兵隊長「ウェルゲー」だ。彼もまた王位継承戦に絡む人物ではあるが、物語の中心筋からはちょっと外れた目線で動向を追いたい。

 王位継承戦が本格的に動き出すにあたって、念能力による攻撃も活発化してくる。そこで、念能力を知らない者にも知識や習得法を共有することで状況の膠着を狙うクラピカ。しかしこのウェルゲーが恐ろしく頭の固い人物で、目に見えない念能力をまったく信じず、協会員の介入を受け入れない。

 ここで出番となったのが、クラピカの協力者として乗船し、マラヤームの警護についていたビスケだ。彼女は本来の大柄で筋肉質な姿をウェルゲーに見せ、念能力の存在について視覚的根拠を示した。言葉も出ないほど驚くウェルゲーだが、その胸の内は「し…信じられん」「こんな…」「こんなに美しい人がいるなんて…‼」というもの。どうやらかなりの筋肉フェチのようで、ちょっとビスケから肩に手を置かれただけで、その指の筋力にドキドキする始末だ。

 かくしてウェルゲーは、ビスケから念を教えてもらうことになった。「勘違いするなよ! 別にクラピカの話を信用した訳ではないぞ」というセリフからは、ツンデレ要素も透けて見える。当のビスケは彼の気持ちには気づいておらず、この二人の関係が今後どう進展するのかも、単純に気になるところだ。

 ついでに恋話といえば、司法局員のカイザルも。ビスケ同様クラピカの協力者として乗船したセンリツとの関係はどうなるのか……どちらも王位継承戦のアナザーストーリーとして注目したい。

 

 以上、『HUNTER×HUNTER』暗黒大陸編より、3人のキャラクターに注目した。あらためて振り返ってみると、本作はモブキャラと主要キャラとの線引きが難しいことに気づく。どのキャラにも多くの場合名前があり、動きがあり、“キャラクター”が見えるからだ。これもまた、多くの読者を惹きつける理由の一つなのだろう。

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