■『思い出のマーニー』佐々木頼子役:松嶋菜々子
2014年公開の『思い出のマーニー』は、『借りぐらしのアリエッティ』で知られる米林宏昌さんが監督を務めた。イギリス出身の作家であるジョーン・G・ロビンソンさんの児童文学を原作に、舞台を日本に変更して制作された本作。
主人公の杏奈役に高月彩良さん、もう1人の主人公・マーニー役に有村架純さんが起用され大きな話題となったが、実は杏奈の養母・佐々木頼子役で出演していたのが、女優・松嶋菜々子さんだった。
松嶋さんが演じた頼子は、杏奈を愛しているもののうまくかかわることができずにもがいている“育ての母親”の役だった。幼い杏奈を引き取った頼子は彼女を育てることに注力し、心配しながらもあたたかく見守っていく……と、難しい役柄なのだが、松島さんは母親らしい優しく澄んだ声色で杏奈を包みこんでいた。
松島さん自身も2児の母であるそうだが、母親の強さや優しさ、美しさを見事に演じきっており、本作になくてはならない「佐々木頼子」というキャラクターの魅力を引き出していたように思う。
■『猫の恩返し』ナトル役:濱田マリ
2002年に公開された『猫の恩返し』には、濱田マリさんが出演している。ナトルは猫の国の王である猫王に仕える秘書である。第2秘書であるナトルはのんびりとした性格で、やや能天気なキャラクター。しかし一方で、主人公・吉岡ハルを無理やり猫の国へ連れてきてしまった一面もある。
そんな重要なキャラクターのナトルを演じていた濱田さん。のんびりとした口調と声がナトルの印象にマッチしており、“猫っぽい”と彼女の演技を評価する声も多かった。
無邪気で可愛らしいナトルの、悪気のない恐ろしさにハルは苦しめられることになるのだが、どうしても憎めない魅力が濵田さん演じるナトルにはあるように思う。
ちなみに本作には、岡江久美子さんや佐藤仁美さんなども脇役で登場しており、豪華すぎる声優陣にも注目してほしい作品だ。
普段から作品で素晴らしい演技を魅せてくれる名女優たち。そんな彼女たちが、『スタジオジブリ作品』で魅せた演技は、ほかでは見ることができない貴重なものだろう。
声優として、キャラクター以上に主張することなく作品に彩りを加えた彼女たちの名演技。ぜひこの機会に、彼女たちの“声”の演技に注目しながら作品を振り返ってみてはいかがだろうか。