■ドキドキを演出する「暗闇」演出

 さて、暗闇とはドキドキするものだ。『名探偵コナン』では、西の高校生探偵・服部平次と遠山和葉の幼なじみコンビが暗闇でドキドキな会話をするシーンがある。

 それは38巻の「服部平次絶体絶命!」でのこと。平次が和葉とともに犯人に拉致されて絶体絶命の危機に陥り、暗号を利用してコナンに助けを求めようと奮闘する回だ。

 平次と和葉の2人は、読者から見ても「早く付き合えばいいのに」と思うほどの関係。こんなに危機的な状況であっても和葉は平次の愛の告白を期待してしまうなどのヒロインらしさが目立った。

 この回の最後はギャグシーンで終わったが、最初のページの1コマ目は、かなり衝撃的な暗闇シーンだった。それは平次と和葉が暗闇の中で、何をやっているのか分からないようなシルエットで描かれて、息を荒げながら「平次…そこちゃうて…もっと左や…」と会話したり、痛がる和葉の様子が描かれるという、捉えようによってはセクシーなシーンにも見えるというもの。

 もちろん実際は拉致された2人の様子を描いているだけなのだが、妙にドキドキしてしまった読者も多いのではないだろうか。

 感動的なシーンもちょっとドキドキするシーンも、あえて「見えない」という手法がとられた暗闇シーンは、我々の想像力をかき立てられ、その結果としてシーンの面白さが倍増するように思う。

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