■命のあっけなさに虚しさを覚える「ニコル・アマルフィ」
続いては『機動戦士ガンダムSEED』より、あまりに悲しき最期を迎えてしまったニコル・アマルフィを紹介しよう。
ニコルはイザーク、ディアッカというクセ者がいるクルーゼ隊の中で唯一、アスランの心の拠り所として、友情を育みながら共に戦ったキャラクターである。
キラとの死闘で劣勢に立ったアスランを後退させるため、ミラージュコロイドで姿を消しながらストライクの間合いまで走り込んだニコルのブリッツガンダム。
とっさに15mもある対艦刀を下げたキラだったが、ブリッツの攻撃を避けたことによりブリッツが自ら対艦刀に走り込む形になってしまうのだ。コックピット内部まで入り込む対艦刀に身体を両断され、その後に爆散するという無惨な最期を迎えた。
休暇中にアスランを自身のピアノコンクールに招くほどピアノが好きだったニコル。最期に、「アスラン…逃げ……。母さん…僕の…ピアノ…」と言ってその短い生涯に幕を下ろすのだ。
最後まで友を気遣い、ピアノへの愛を忘れなかったニコルの死は、アスランの心に大きな傷を残し、キラとの戦いがさらに泥沼化していくきっかけとなった。戦争がなければ、間違いなく穏やかな人生を送っていたであろう心優しき少年の死——。視聴者もやるせない気持ちになってしまった衝撃的なシーンである。
■哀れな演出で存在を焼き付けた「アレハンドロ・コーナー」
最後に『機動戦士ガンダム00』より、ネタとして扱われてしまうことも多いアレハンドロ・コーナーを紹介しておこう。
第25話「刹那」にて、トランザムを発動したエクシアに敗北し、満身創痍だったアレハンドロ。そこに、自身に仕えていたリボンズから通信が入る。
実はリボンズの手中で踊らされていたことを知り、器量が小さいと嘲笑されたことに激昂したアレハンドロは、「リボンズゥゥゥ!!」と叫びながら通信画面を殴りつけた。
その直後、搭乗していたアルヴァアロンが爆散する様子が描かれるのだが、皮肉にもこのシーン、アレハンドロが画面を殴ったことにより爆発したように見えて、ファンの間ではそのシュールさからたびたびネタにされてしまうのである。
登場シーンは決して多くはなかったが、その哀れな死の演出と引き換えに、視聴者の思い出に存在を焼き付けたキャラクターであるとも言えよう。
良くも悪くも死の間際の言動というのは人々の印象に残るものである。やがて誰しもに訪れる最期の瞬間。自分はどのような言葉を残して人生に幕を下ろすのか、時折考えてしまうこともあるだろう。願わくば、ジェリドやアレハンドロのように誰かへの怨念を残すような死に方はしたくないものである。