漫画の連載期間も長期となると、作中での設定が矛盾することがある。時代の流れに沿っているという理由もあるが、中には作者が以前描いたことを忘れてしまっているのでは? とつい疑ってしまうものも。
今回は読みながらついツッコんでしまった、面白い矛盾の数々を紹介したい。
まずは『ドラえもん』から。映画『ドラえもん のび太の恐竜』の原作である『大長編ドラえもん』では、のび太がピー助という恐竜をかくまっているときに、ドラえもんが「あんたは恐竜ハンターだな!!」と憤慨する。ドラえもんによると、22世紀では「中生代のめずらしい動物を、殺したりつかまえたりして金持ちに売る」ことは航時法という法律で禁じられているらしい。
男らしく正義感を振りかざしたドラえもん。しかしコミックス2巻「恐竜ハンター」では、のび太に「セワシくんときょうりゅうがりに行ってきたんだ」と嬉々として語っている。驚くべきことに、法律で禁止されていたはずなのに「未来の世界ではやっているんだ。おもしろいスポーツだよ」と続け、そうして連れて帰った恐竜はペットにするものなのだという。
また、『藤子・F・不二雄大全集』3巻「きょうりゅうがきた」にも恐竜を現代に無理やり連れてくる話がある。
恐竜ハンターが違法なのは、過去へ干渉することによって歴史を変える恐れがあるためだというが、売りさえしなければセーフなのだろうか。それとも密猟とあくまでスポーツという違いだろうか。どちらにしても恐竜側の人権(?)は守られていないような気がする。
なおこの矛盾については、2015年に放送されたテレビアニメにて、合法的に恐竜を捕まえる行為は「恐竜ハンティング」と呼ばれており、捕獲後はハンティングセンターの係員が元の世界・場所に戻すということで設定に矛盾がないよう補足されている。
続いては、雁屋哲氏原作、花咲アキラ氏作画によるグルメ漫画『美味しんぼ』。さまざまな料理に対する知識や批判が日本の料理界に影響を与えた同作は、巻数が多いだけに矛盾も点在する。
代表的なのが5巻「サラダと美容」と34巻「サラダ勝負」。5巻では主人公の山岡士郎は「本当の野菜なら、ドレッシングなんかかけないほうがうまいぜ」と言い、サラダには何かかけるという固定観念も考え直す必要があると語っているが、34巻では「ドレッシングをかけると野菜の味が損なわれるように思うけど、逆に野菜の味がもっとよくわかるようになるんだよな」とドレッシングに好意的な姿勢を見せている。
このほかにも44巻では、ラム酒はサトウキビの廃糖蜜を発酵させ加工して作っているという点について、その知恵をたたえていたが、一方で同じように廃糖蜜を発酵にて作った日本酒については「冗談じゃないよ。米を磨いて造ったお酒のつもりで、そんなアルコールを飲まされるなんて!」と痛烈にこき下ろしている。また66巻のエピソードでも、化学調味料の原料となる廃糖蜜を「廃液」「タール状」などと呼び、読者にあまりいい印象を与えない言い方をしている。
いずれの食品も廃糖蜜を発酵させて作る人間たちの英智の結晶ばかり。しかし、エピソードによって読者が廃糖蜜から受ける印象が大きく異なってしまう。