田中裕子や夏木マリも…スタジオジブリ作品で悪役を務めた芸能人の“トラウマ級に怖かった名演技”の画像
© 1986 Studio Ghibli

 子どもから大人まで幅広い世代に愛されているスタジオジブリ作品には、怖くて恐ろしい悪役が登場するシーンがある。そしてそんな悪役の声を芸能人が演じ、たびたび話題になることも多い。そこで今回は、スタジオジブリ作品で悪役キャラを演じていた芸能人たちの“トラウマ級”に怖かった名演技をご紹介しよう。

■子どもたちが泣いた…!? 『ゲド戦記』クモ役の田中裕子

 2006年公開の『ゲド戦記』で、悪役である魔法使い・クモを演じていたのが、女優の田中裕子だ。

 田中といえば、1983年から放送されたNHK連続テレビ小説『おしん』の主演・田倉しん役で知られ、以降も数々の映画やドラマなどで活躍している押しも押されもせぬ名女優だ。

 彼女の演じるクモの性別は男性ではあるのだが、中性的な美しさを持ち、田中の落ち着いた声がとてもマッチしていた。しかし物語のクライマックスが近づくと、クモは豹変していく。髪をふり乱し感情的になっていく様子は恐ろしく、「死んだ、死んだ、かわいそう…」とボソボソとつぶやく声が「怖すぎる」と話題になった。

 そんなクモ役で名演を見せた田中だが、1997年公開の『もののけ姫』でも悪役・エボシ御前を務めている。エボシは石火矢をつくり出す“タタラ場”を築き、人々を率いるリーダーだった。彼女は自分の目的のためなら森を壊すことも、神と呼ばれる動物たちを殺すこともいとわない性格で、物語においてサンやアシタカと敵対することになる。

 田中はそんなエボシの、芯が強く気品がありつつも冷静な女性像を見事に演じている。彼女の迫真の演技を見て、宮崎監督や鈴木敏夫プロデューサーは思わず「うまい」と感嘆し、絶賛するほど。何度も監督が“会心の笑み”を見せる様子がドキュメント映像『「もののけ姫」はこうして生まれた。』に収録されていた。約2年にわたって記録したこの作品も、本編と併せて見てみると、よりジブリを知ることができ、楽しめると思う。

■「人がゴミのようだ」はジブリ屈指の名セリフ!『天空の城ラピュタ』ムスカ大佐役の寺田農

 1986年公開の『天空の城ラピュタ』の悪役といえば、ラピュタを探すためにヒロイン・シータをつけ狙うムスカ大佐だ。

 彼は政府から派遣された優秀な諜報員で、わずか28歳にして大佐という階級まで上り詰めたエリートでもある。優秀なのは間違いないのだが、ムスカは自分の目的のために冷酷非道な行いの数々を犯したことでも知られている。

 シータをつけ狙い、彼女を拉致にも近い形で連れ去るムスカ。やがてラピュタを見つけると、今までともに戦ってきたはずの軍の人間たちを、“ゴミのように”下界へと落としてしまう。

 ムスカがこのときの様子を見て言い放った「見ろ! 人がゴミのようだ!!」は、彼の名セリフとしてあまりにも有名だ。人間が遥か下の世界へ落とされているというのに、嬉々として叫ぶムスカには狂気すら感じてしまうのは筆者だけではないはずだ。

 そんなムスカ役を演じたのが、寺田農だ。俳優として『ウルトラシリーズ』や『銭形平次』、『大江戸捜査網』など数々のドラマへの出演、そして、その美声からかナレーター役に抜擢されることも多い寺田。

 じつはムスカを演じた当時、宮崎監督とモメてしまったというエピソードを2022年11月8日に公開されたテレビ朝日によるインタビューで明かしていた寺田。アニメ製作特有のアフレコ風景が肌に合わなかった寺田は、タイムラップのみでセリフの演技をすることがストレスだったそう。ムスカ役が一時期“トラウマだった”というから、驚きである。

 それにしても、たった2日という短い時間で不慣れなアニメ声優に挑戦した寺田だが、そんなことを微塵も感じさせない名演技は、さすがと言わざるを得ないだろう。

  1. 1
  2. 2