「ルパン音頭」は放送なるか!? 正統にして異端…『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の「攻めた」ポイントの画像
『ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン)』原作:モンキー・パンチ ©TMS

 1977年8月、劇場アニメ映画『宇宙戦艦ヤマト』が公開され、社会現象になるほどの大ヒットとなった。これはアニメ映画劇場版ラッシュ時代の幕開けだった。

 4月28日に日本テレビ系『金曜ロードショー』で放送される『ルパン三世 ルパンVS複製人間』は、『ヤマト』の翌年である1978年12月に公開されたアニメ『ルパン三世』劇場版の第1作。この流れは、その翌年1979年12月に公開された『ルパン三世 カリオストロの城』へ、そして現在まで連綿と続くアニメ『ルパン三世』シリーズのルーツの一つとなっている。

 2019年4月11日に亡くなったモンキー・パンチの追悼企画として4月19日に放送されて以来、約4年ぶりにテレビ放送される『ルパン三世 ルパンVS複製人間』。

 本作は実に攻めた内容のてんこ盛りの映画で、冒頭、いきなりルパン三世の死、という衝撃の展開から始まる。それを頑なに信じない銭形の孤軍奮闘、そして(もちろん死んでいない)ルパン三世が、次元・五ェ門・不二子たちとともに、自らをクローン化することで不死を名乗る男・マモーと「賢者の石」を巡る戦いを世界中で繰り広げる……。劇場版ならではのスケール感を誇る、エンタメ要素たっぷりの物語だ。

■「クローン」を扱うという大胆なテーマ選び

 まず作品のテーマ選びから攻めた作品だった。

 オープニングでは、大野雄二氏による名曲「ルパン三世のテーマ」に合わせ、受精卵がクローンによって大きくなるシーンが描かれているが、当時は「クローン」という概念自体が最先端科学のちょっと先くらいを行っている時代で、観客がオープニング映像を十分理解出来ていたか、正直疑問が残る。だが逆に言えば、それぐらいエッジの効いた、大胆なアイデアを採用していた、ということでもあるのだ。

 監督・脚本を担当した吉川惣司氏も、「クローンを扱った映画って『ルパン』が初じゃない?」との言葉を残している(『ルパン三世officialマガジン』vol.7収録のインタビューにて)。いかに有名作品とは言え、大事な第1作の中心に「良くわからない難しそうな科学的アイデア」を据えるとは、今ではリスクが高くて実現できないかも知れない。しかも本作では、その設定を古典的アイテムである「賢者の石」と合わせることで、きちんと消化しているのだ。

 ルパンの「眉毛」をはじめ、各キャラクターのデザインも注目だろう。

 同じタイトルでも作品によってキャラデザが違うのは普通のことだが、70年代のアニメであそこまで変わった作品はあまり例がない。現在であれば、下手をすれば炎上案件になる可能性もありそうなほどのデザイン変更だった。

 メインキャラの体型はむしろモンキー・パンチの原作漫画に近いシャープかつスタイリッシュなシルエットになり、特にルパン三世の顔はよりきつ目に、眉毛が上がった独特の形をした「攻めた」デザインになっている。最初はちょっと違和感を覚えるかも知れないが、観ているうちに当たり前になり、ラストあたりではカッコ良く見えているはず。劇場版ならではの心地よい体験が出来るのが、本作の魅力でもある。

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