漫画やアニメにたびたび登場する、仮面や覆面をつけたキャラクター。その素性や目的はもちろんのこと、隠された“素顔”にも興味が湧いてくるものだ。とくに屈強な武闘派キャラクターの正体が実は女性であったとなれば、読者の驚きもひとしおだろう。そこで作中で意外な素顔を見せた、仮面や覆面を身につけた女性キャラたちについて見ていこう。
※以下には、コミック『ONE PIECE』『キングダム』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。
■素顔を隠し戦う気高き“聖闘士”たち…『聖闘士星矢』シャイナ、魔鈴
1985年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された車田正美氏による『聖闘士星矢』は、“星座”や“ギリシャ神話”を題材とした世界観のなか、数々の聖闘士(セイント)たちが各々の力をぶつけ合い、激闘を繰り広げるファンタジーバトル漫画だ。
本作には数多くの女聖闘士も登場するのだが、なかでも素顔を隠したキャラクターとして有名なのが、“白銀聖闘士”として登場するシャイナと魔鈴である。
それぞれ、“蛇遣い星座(オピュクス)”のシャイナ、“鷲星座(イーグル)”の魔鈴と呼ばれており、白銀の聖衣(クロス)を身にまとっているのはもちろん、無機質な仮面で素顔を隠し活動している。
もともと“聖闘士”は男性がなることが基本であり、女性は仮面を身につけることで女であることを捨て、万が一、素顔を見られた場合は相手を殺して口封じをするか、その相手を女性として愛するしかない……という古くからの慣習が存在する。
作中、シャイナは主人公・星矢とも激突し、その際に仮面を破壊されて素顔があらわになってしまった。仮面の下の素顔は緑色の長髪を持つ美少女で、この出来事がきっかけとなり、彼女は執拗に星矢をつけ狙うこととなる。
一方、魔鈴は星矢にとって“師匠”とも呼べるポジションなのだが、作中では最後までその仮面を取ることはなかった。
長年、ファンが考察をかわしていたが、アニメにてキャラクターデザインを担当した荒木伸吾氏の画集や、のちに作成されたゲームなどでその素顔が明らかとなった。
仮面の下は穏やかな眼差しを持つ美女で、どこか星矢の姉・星華に似た雰囲気を持つ。これは当初、物語のなかで「魔鈴の正体は星華なのでは」と思わせるミスリードがいくつもあったのだが、それを意識したデザインではないかと思われる。
素顔を隠し、女性であることを殺しながら戦う姿は、まさに“戦乙女”。どちらも、気高さを感じられる女性キャラクターたちである。
■かつての“英雄”に憧れる四皇の一人息子…『ONE PIECE』ヤマト
1997年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が開始された尾田栄一郎氏による『ONE PIECE』は、その国民的人気から今もなお、さまざまなメディア展開を続けている。
作中の「ワノ国編」では、主人公・ルフィら“麦わらの一味”が、四皇の一人・カイドウ率いる“百獣海賊団”と激戦を繰り広げるのだが、そのなかで登場した仮面キャラクターこそ、カイドウの一人息子を名乗る謎の人物・ヤマトだ。
般若の仮面で顔を隠し、和装に長い髪、赤い二本の角を持っている。カイドウの息子ということからかなりの高身長で、なぜか敵対しているはずのルフィらにも友好的な態度を見せていた。
しかし、一人称こそ“僕”と名乗っているものの、その正体は女性。つまるところ、彼女はカイドウの“一人娘”なのだが、百獣海賊団の面々からは「ヤマト坊ちゃん」という呼び方で親しまれている。
かつてカイドウらの手によって処刑された英雄・光月おでんの死に際を見届けたことで、彼の最期に感銘を受け、憧れに近付くため「男として生きる」ことを決意。とはいえ、こんな思想を父・カイドウが容易に受け入れるはずもなく、二人の仲は非常に険悪だ。
正体を明かしてからはルフィらの側につき、自身の父・カイドウと彼が率いる百獣海賊団を相手に、奮戦することとなるヤマト。
四皇の血を引くだけあり、その戦闘能力は非常に高い。普段は金棒を得物に父同様の“雷鳴八卦”や、氷を吹きつける“無侍氷牙”などの技を用い、並みいる強敵たちと互角以上の戦いを繰り広げて見せた。
父から数々の優れた素質を受け継ぎつつ、一方で父が殺した“英雄”を目指し躍進し続ける、なんとも型破りなキャラクターといえるだろう。