長い歴史を持つ『ガンダム』シリーズでは、MS(モビルスーツ)同士の激しい戦闘シーンが描かれる。それぞれの作品で登場するMSは、老若男女幅広い層のファンがおり、プラモデルが品薄になるほど人気となっている。
どれほどヒロイックな見た目をしていてもMSはやはり兵器のひとつではあるものの、実はシリーズの中にはMSが戦闘以外の場面で活用されたことがある。
今回は、そんなMSが戦闘以外で活躍するシーンの中でも、特に印象的な3つを紹介したい。MSが持つ意外な一面に触れることで『ガンダム』シリーズの世界観をより深く楽しむことができるかもしれない。
■命を救った名湯?ビームサーベル風呂
まずは、『機動戦士ガンダム第08MS小隊』の主人公シロー・アマダが、敵対するジオンのアイナ・サハリンとともに雪山で遭難した際に見せた行動。ファンの間では有名であろう、ビームサーベルで雪を溶かして露天風呂を作ったエピソードだ。
この話は、アイナが乗るアプサラスを撃墜するための待ち伏せ作戦が失敗したところから始まる。シローの陸戦型ガンダムは、アプサラスにしがみついて攻撃するも撃墜には至らず、そのまま強引に雪山に離脱されてしまう。紆余曲折あり、互いに助け合うことでなんとか雪山に不時着するが、猛吹雪が二人の体温を奪い絶体絶命に陥ってしまう。
そこでシローが思いついたのが、陸戦型ガンダムのビームサーベルを利用し、雪を溶かして風呂を作るというアイデアだった。
MSの装甲も容易に切り裂いてしまうビームサーベルを、いくら最低出力にしたとしても非常に危険な行動に思える。だがそこはシローの調整が上手く、実に良い感じの露天風呂が完成。シローとアイナは湯によって暖を取ることができ、互いの救援も間に合い一命を取り留めることができたのだ。
歴代の『ガンダム』シリーズで、敵の装甲を幾度も切り裂いてきたビームサーベル。『機動戦士Vガンダム』や『機動戦士ガンダムサンダーボルト』では、なんと生身の人間を蒸発させるショッキングな使われ方もされた。
これを『第08MS小隊』では一転、人の命を救って見せたのだ。兵器も使い方次第、というシローのメッセージだろうか。
■その発想は無かった!ライブ会場専用ザクウォーリア
続いては、最初見たときは眼を疑ってしまったザクウォーリアの使い方。ザクウォーリアは『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場するMSで、ザフト軍の主力として作中でも、ルナマリアやディアッカが乗り活躍した機体だ。
そんな名機ザクウォーリアを、なんと「痛車」仕様にしてしまったのがミーア・キャンベルだ。
彼女は『SEED DESTINY』開始時点で姿をくらましていたラクス・クラインの影武者になるため、整形手術まで受けた女性。ラクスの影響力を欲したデュランダル議長が、ミーアを旗頭にしてプロパガンダ活動をしていたのだ。
そしてその活動の一環として描かれたのが、第19話「見えない真実」でのミーアによるライブコンサート。その舞台上で登場したのが、ド派手なピンク色のカラーリングを施したザクウォーリアだった。
右肩にはハート、左肩にはハロ、胸部には「LOVE」の文字がマークされているこのMS。シリアスな『SEED DESTINY』の世界観を色んな意味で破壊した衝撃のシーンだったが、ミーアはこのザクウォーリアの掌にのり歌って踊ることで、ザフト軍の兵士たちの士気を大いに高めていた。
SDガンダムなど外伝作品では、コミカルな役回りをすることも多いザク系の機体だが、まさかシリーズ本編でこのような姿で登場するとは。一度見たら忘れられない使われ方と言えるだろう。
ちなみに、一部ゲーム作品ではこのザクウォーリアにミーアを載せて戦うこともできる。『Gジェネ』シリーズでは、個性的な性能を与えられていることもあり、意外と活躍するかもしれない。