■『ススムちゃん大ショック』トラウマ漫画の金字塔として名高い伝説の問題作
長編だけではなく「短編」でも衝撃的な作品があった。最後に紹介する『ススムちゃん大ショック』は、何の前触れもなく大人が子どもを殺し始めるスプラッタホラー。少年ススムは公園で母親たちが子どもを殺すのを目撃し、助けを求めた交番では警官が子どもを射殺し小学校は血の海となっていた。ススムたちはラジオなどで原因を調べるが、同級生の東間は「ネズミやゴキブリを殺してもニュースにはならない」ことに気付いてしまう。
つまり、親子の絆が断たれたことにより、大人にとって子どもは害虫と同じ存在になったのだ。ショックを受けたススムは呆然自失となり、同級生が止めるのも無視して「いつもと変わらないママ」の元に帰るのだが……。母親に殺されるのが当たり前という世界観は、当時多くの子どもたちにトラウマを植え付けた。翌年には『デビルマン』が連載され、本作のプロットが挿話(同名のススム)として使用されている。
短編では『蟲』もかなりのトラウマと嫌悪感を抱く作品だ。優等生の少年キヨシがある朝目覚めると、家族が虫になっていた。学校では友人や教師も虫の姿だが、ここで登場した虫の給食を食べるカマキリ(友人)の絵がかなりキツかった。
さまざまな作品で読者の心を揺さぶり続けた永井作品を、これを機に読み返してみてはいかがだろうか。