永井豪の怖さ!ジンメン、人犬、食虫など読者に「強烈なトラウマ」を植えつけた名作たちの画像
講談社漫画文庫『新装版 デビルマン』第1巻(講談社)

 永井豪氏の代表作『デビルマン』と『マジンガーZ』が2022年に50周年を迎え、それを記念して2023年4月8日から東京都豊島区・トキワ荘マンガミュージアムにて特別企画展が始まり、幅広い層のファンから注目を集めている。

 永井氏といえば前述したメディアミックス作品の他に、『けっこう仮面』や『ハレンチ学園』などお色気ものから、『手天童子』や『凄ノ王』のような伝奇と日本神話をモチーフとしたSF、バイオレンスものなど多くの作品を生み出してきた漫画家。雑誌を移るごとに作風の幅を広げ、独自の世界観で多くの読者を魅了してきた。

 テレビアニメ化され国民的漫画を多く生み出した永井氏だが、氏の漫画には過激な描写が多く、何も知らずに読み進めると思いもよらぬ衝撃を受けてしまうこともある。そこで今回は、多くの読者に「強烈なトラウマ」を植え付けたであろう永井作品をいくつか振り返りたい。

■『デビルマン』ジンメン、魔女狩り、拷問など濃縮されたトラウマの宝庫

 国内外に多くのファンを持つ『デビルマン』は1972年より『週刊少年マガジン』にて約1年連載。同時期に放送されたアニメ版と漫画版とでは、主人公・不動明が悪魔と合体し戦う基本設定などは同一だが、作品の性質はまるで真逆。アニメ版はあくまで子ども向けヒーロー番組であるのに対して、漫画版は人類滅亡を描いた「黙示録」をモチーフとした重めなテーマだ。

 そんな漫画版はコミックス全5巻のなかに、数えきれないほどのトラウマが詰め込まれている。たとえば、デーモンの攻撃や無差別合体などもあげられるが、多くのファンが一番のトラウマとしてあげるのが、暴徒化した人々による「魔女狩り」と称したヒロイン惨殺であろう。他にも、牧村夫妻が受けた凄惨な拷問など目を覆うシーンが並ぶなか、本作で筆者が取り上げたいのが「サッちゃん」だ。

 サッちゃんは明が以前住んでいた隣家の子で、自称“恋人”。彼女は明に会うため牧村家を訪れるが、帰りの新幹線でデーモンの襲撃で殺され、亀に似たジンメンの甲羅の一部となってしまう。甲羅に大勢の死人の顔が並ぶインパクトとともに、「あたし死人なの」「こわかったわ いたかったわ」と涙ながらに語る少女の最期は今も胸が苦しくなるほどのトラウマだ。

■『バイオレンスジャック』スラムキングにより貶められた二人のあるキャラクター

 次に紹介する『バイオレンスジャック』は、いく度となく掲載誌を変えながら完結までに18年ほどを費やした長編大作だ。筆者の手元にある全10巻の「完全版(愛蔵版)」は、1冊が45ミリ(約880ページ)とトンデモないページ数。そのあまりにも分厚い本作では、大勢の魅力的なキャラクターが濃厚なストーリーを彩っていた。

『バイオレンスジャック』は「関東地獄地震」で本土から切り離され荒廃した関東を舞台に、謎の大男バイオレンスジャックを中心に壮絶な死闘が巻き起こる物語。ジャックの前に宿敵として立ちはだかり、人々を恐怖と暴力で支配する存在がスラムキング(銅磨高虎)である。母親の腹を引き裂いて誕生し、美しい妻を虐待した末に生きながら焼き殺したスラムキングが、己の残虐性を周知させる存在が「人犬(ひといぬ)」だった。

 人犬とはスラムキングの命令で四肢をヒザやヒジで切断され、犬のように一系まとわぬ姿のまま四つ足で過ごすことを強要された人間たち。さらに彼らは見せしめとして存在するため、自分の意思で死ねないように舌を抜かれていた。特に飛鳥了と牧村美樹は人犬として過酷な仕打ちを受け続け、どれほど凄惨な虐待を受けても手厚い治療で死ぬことも許されずにいた。

 ちなみに本作では、『デビルマン』『マジンガーZ』『キューティーハニー』などさまざまな永井作品のキャラクターがゲスト出演しているが、それぞれの性格や設定などは微妙に違っている。

  1. 1
  2. 2
  3. 3