■『スカイハイ』に90年代の名作ホラー『闇は集う』も
さて、上記は職員により成仏するよう促されていたが、自分で死後の行き先を選べるのが髙橋ツトム氏による『スカイハイ』だ。2003年には釈由美子主演でドラマ化もされた人気作品だ。
命を落とした者は番人・イズコが待つ「怨みの門」を訪れる。そこで生前の記憶や残された者たちの様子を見て、最終的に自身で「天国で再生を待つ」か「現世でさまよい続ける」か「現世の人間を1人呪い殺し、地獄へ逝くか」を決めることができるというものだ。
ドラマでは着物のような黒く長い衣装に身を包んだ釈演じるイズコが、各話の最後に「おいきなさい」と指差しポーズでいうのがお約束だった。「いく」の漢字は、天国の場合は「生」、さまよう場合は「行」、地獄へ行く場合は「逝」となっている。同ドラマでは釈の初々しくもミステリアスな雰囲気が話題となり、深夜枠ドラマにも関わらず大きな話題を集めていた。
毎回想像のできないストーリー展開やどんでん返しで、善人と思われた人が地獄行きを選んだり、恨みに駆られていた人が考え直して天国へ行ったりと、毎話最後まで結末が読めない。
さらに天国へ行ったからといってハッピーエンドのカタルシスを感じるというわけではなく、後味が悪かったり「もし自分だったらその選択はできない」と思うものだったりと、人間の業の深さを感じる作品であった。人間とは多面的な存在であると実感させられる。
続いては、マッドハウス制作のオリジナルアニメ『デス・パレード』。こちらは死者の魂が客として訪れる謎のバーで強制的にゲームに参加させられて、裁定人により魂の行き先を決められるというものだ。
ゲームは客2人が争う形で参加させられ、どれも命を懸けて行うというもの。生前の記憶や行動を振り返りながら、蹴落とし合いやかばい合いなどが行われ、ちょっとしたシーンで人間の本性がかいま見える。最後にはエレベーターで「転生」「虚無」それぞれの行き先に乗せられるが、こちらも意外な結末が多く見逃せない。
さて死後の選択をする作品は少女漫画にも存在する。1994年より『なかよし』(講談社)にて連載されていた松本洋子氏によるホラー作品『闇は集う』だ。
さまよえる魂たちが訪れる闇の中の部屋で番人に出会い、それぞれの思いや心残りを打ち明けることで、番人がさまよえる魂を「生の道へ戻るべきか」「死の道へ進むべきか」を判断するというもの。
番人は思慮深く、その静かな眼差しにはどこか人間を信じたい心があるように感じるが、例え生まれ変わっても幸せとは限らないのがこの作品の深いところ。生まれ変わることで、生前より深い絶望に突き落とされることも往々にしてある。『なかよし』にしてはグッと対象年齢の高い大人も楽しめる作品だった。
どの作品も、つい「自分ならどうするか」と考えながら読んでしまう、人間の業を感じる作品ばかり。人間には誰しも醜い部分があると受け入れると同時に、「許す」「認める」ということがキーワードであるような気もする。
しかし一番大切なのは、生きている今を誠実に清く生きようという気持ちを持つことなのかもしれない。