1969年から放送が開始され、今や日曜夕方の定番となっている『サザエさん』。長谷川町子氏による原作は、1946年から1974年まで新聞に掲載された4コマ漫画である。そんな長い歴史を持つ作品だからだろうか、本作にはさまざまな都市伝説がささやかれている。今回はそのなかから3つの説をピックアップし、その出どころや真相を調査してみた。
■タラちゃんには妹がいた?
最近話題になったので、真相を知っている人も多いかもしれない。それが「タラちゃんには“ヒトデちゃん”という名前の妹がいた」という都市伝説だ。
このヒトデちゃん、2019年にアニメ化50周年を記念して放送された実写ドラマ『磯野家の人々~20年後のサザエさん~』に登場し、当時ツイッターのトレンド1位に上がるほどだった。
実はヒトデちゃんはドラマオリジナルキャラではなく、1954年発刊の雑誌『漫画読本』(文藝春秋)にて「サザエさん10年後」を描いた1コマ漫画に実際に登場していた。
漫画では、磯野家があった一帯が大きな道路になっており、それを一家そろって見物しに行く様子が描かれている。「タラちゃん おぼえてる?」と尋ねるサザエに対し、「おぼえてねえや 子供の頃だもの」と答えるタラちゃんは、見た目も口調もすっかり成長しており、別人のようだ。その後ろで、小さいころのワカメによく似た女の子が走っており、マスオさんが「これヒトデ あぶないよ」と声をかけている。
ヒトデちゃんはアニメでは登場しておらず、このとき一度登場したきり。そのため“幻のキャラクター”としてなかば都市伝説化していたのだが、65年の沈黙を破ってドラマに登場し、タラちゃんの妹であり、8人目の家族としてその存在を日本中に知らしめることとなったのだった。
■フネは波平の後妻で、サザエとカツオ・ワカメは異母きょうだい?
昔からまことしやかにささやかれている噂の一つに、「サザエの実母は既に死亡しており、カツオ・ワカメは波平の後妻であるフネの子ども」というものがある。
噂の出どころは、サザエとカツオの年齢差にあるようだ。サザエが24歳、カツオは11歳と、その差は13歳。加えて、“波平とフネが墓参りをするシーンがあり、そのときフネの機嫌がやたらと悪かった”という噂も広がった。波平は福岡出身、フネは静岡出身。なら東京近郊のあの墓にはいったい誰が眠っているのか?……そんな疑問から、「あれは波平の前妻の墓で、だからフネは機嫌が悪かった」という結論に至ったのだろう。そうすれば、サザエとカツオの年齢差にも合点が行く。
しかし『サザエさん』の著作権を有する一般財団法人「長谷川町子美術館」の広報担当は、この都市伝説について「原作からそのような噂を読み取れる場面はない」ときっぱり否定している(2016年4月22日付スポニチのインタビューより)。
実際、墓参りでフネが機嫌を損ねるシーンもないし、サザエとカツオの年齢差も当時とくに珍しいことでもなかったようだ。