■最終回は飛行機事故で一家全員死亡して海に帰った?

 最終回にまつわる都市伝説はいくつかあるが、そのうちの一つが「カツオが商店街の福引で当てたハワイ旅行に一家で行った帰り、乗っていた飛行機が墜落。一家はそれぞれの名前にちなんだ生物になり、海に帰った」というもの。

 実際の連載最終回は、1974年2月21日の朝日新聞に掲載された。石油危機と物価高により給食が廃止され弁当持参になったなか、カツオのクラスメイトは授業中コンロに鍋をかけ「うちの両親は共かせぎでース」と言う、という話。このあとに原作者の長谷川氏は体調を崩し、長期休載を経て自主打ち切りとなった。

 単行本のほうは連載と違う順番で収録されており、最終回は68巻の最終話「ひょうりゅう記」。乗っていた船が沈没し、近くの島に漂流したサザエ、カツオ、ワカメ、波平。そこで波平が「ひとくいじんしゅ」に捕らえられたが、サザエの機転で仲良くなることに成功し、もらったカヌーで島から脱出した……というサザエの夢の話だ。

 一説によると、このときの船の沈没や漂流が、巷でささやかれる飛行機事故や海に帰るという内容を連想させたのではないかという。

 ちなみに、のちに『サザエさん』文庫版コミックや『長谷川町子全集』が発行された際、この話は未収録となっている。この“封印された最終回がある”というのも、都市伝説にはおあつらえ向きの要素ではないだろうか。

 

 日本を代表する一家なだけに、噂がたえない磯野家・フグ田家。これに関してオカルト界の巨匠・山口敏太郎氏は『マンガ・アニメ都市伝説』(ベストセラーズ、2008)のなかで、“『サザエさん』のエンディングが流れると、明日から始まる会社や学校のことを考えて憂鬱な気持ちになり、予定調和な磯野家の平和を破壊したい気持ちが芽生えるのではないか”と分析している。いわゆる“サザエさん症候群”だが、この話からも、いかに『サザエさん』が日本人の生活に根付いているのかがよく分かる。

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