■モノローグばかりだった主人公・斉木楠雄

 麻生周一氏による『斉木楠雄のΨ難』は、超能力と残念な欠点をあわせもつ高校生・斉木楠雄の日常を描いたギャグ漫画だ。ギャグ漫画だけあって、斉木のみならず、登場するキャラクターの多くはいわゆる変人といえる。

 クラスにおいて影が薄く、他人と関わろうとしないいぼっちで陰キャな斉木だが、実はそうする理由が、彼のもつ超能力にあった。それは、斉木の超能力が万能すぎて無敵状態だったため、他の「普通」の人間との違いにコンプレックスをもっていたのだ。

 こうした背景があり、なんと斉木は主人公であるにもかかわらず、作中で吹き出しつきのセリフを発したことが一回しかないというユニークすぎるエピソードをもっている。表情が変わることもあまりないため、彼の心情は常にモノローグで語られているのだ。しかし、モノローグ上はかなり饒舌なのも面白い。

 しかし、他人と関わろうとしないようにしているものの、なんだかんだ友人たちがピンチになると、こっそり助ける優しさをもっているあたり、意外と普通の高校生といえるのかもしれない。

 以上、今回はユニークすぎる陰キャが主人公として描かれた漫画作品を紹介した。どのキャラクターも非常に個性が強く、面白い設定をもっている。一癖も二癖もある彼らではあるが、作品を読み進めるにつれて、彼らならではの魅力を知り、気づけば沼にはまってしまったという読者も多いのではないだろうか。

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