■『サイコメトラーEIJI』のサイコメトリー
『サイコメトラーEIJI』(原作:安童夕馬氏・作画:朝基まさし氏/講談社)は、主人公の明日真映児が、物や人に触れることで残留思念を読み取る特殊な能力「サイコメトリー」を使って事件を解決していくミステリー漫画だ。サイコメトリーは現実にもあるとされている能力で、TVの事件捜査番組などでその使い手である人物が登場するのを見たことがある人も多いだろう。
作中では、当初は映児にしかこの能力が使えず、その不思議な力に誰もが魅了されたはずだ。しかし、映児の命の恩人である赤樹刑事や、敵として現れた幾島なども実はサイコメトラーだったと知ってしまうと、そんなにもサイコメトリーを使える人間がいたのか……と、映児に感じていた特別感は薄れてしまった。
しかもこの2人が映児以上にサイコメトリーを使いこなしていたので、「もしかして映児の能力ってそれほどすごくないのでは?」とすら思ってしまったものだ。
最初に登場したときは特別なものとして描かれていた特殊能力が、ストーリーが進むうちにだんだん当たり前のものになっていってしまうのは、ある意味ではバトル漫画の宿命とも言える。強い敵を倒すために主人公たちが強くなり、さらにそれを超える敵が出てくるという、いわゆる「強さのインフレ」問題と根っこの部分では同じだからだ。特殊能力に対抗するために使用キャラが多くなっていき、結果としてその“特別感”が薄れていってしまうのだ。しかし、それを踏まえた上で、使うキャラによってどういう違いが生まれるのかを楽しむのが本道なのかもしれない。