漫画やアニメに登場するキャラたちは、現実では考えられないような色々な能力を持っていることが多い。その中には、想像の枠をはるかに超えるものもあったりする。そんな特殊な能力が初めて登場すると、読者・視聴者は誰もが「こんなすごい能力が出てきて、この先どうなるのだろう?」とワクワクするものだ。
しかし、ストーリーが進むにつれて、そんなすごい特殊能力でさえも特別感が薄れていってしまうことも「あるある」だ。作中で強さのバランスを取るために、同じ能力を周りのキャラも身に付けて使い始める、といった現象がしばしば起きるからだ。その好例が『ドラゴンボール』の超サイヤ人で、初登場時には“伝説”とされる能力だったのに、のちにはベジータをして「まるで超サイヤ人のバーゲンセールだな」と言わしめるほど、作中ではありふれた存在になってしまっていた。
今回は、そんな“最初は特別だったけどのちに当たり前になってしまった”特殊能力の代表的なケースを紹介していきたい。
■『ONE PIECE』の覇気
『ONE PIECE』(尾田栄一郎氏/集英社)は全世界での累計発行部数が5億部を超え、ギネスの世界記録(「最も多く発行された単一作者によるコミックシリーズ」)を更新し続けている、国民的人気漫画だ。その作中では、悪魔の実によってそれぞれのキャラが能力を身に付けるが、悪魔の実の能力とは関係なく、選ばれた人間しか使用できない特殊な力もある。それが「覇気」だ。
覇気を使用することで、物理攻撃を受け流し無効化する自然系能力者に対しても、ダメージを与えることが可能となる。そんな覇気について詳しく語られたのは、ルフィがレイリーの下で修行する場面だ。そこでルフィには覇気を扱う素質があることが明かされ、覇気の種類や使い方を読者も知ることとなった。そして、使用できる人間が限られた覇気を使えるからこそ、ルフィはすごい存在なのだと思ってしまった。
しかしそれも、ストーリーが進むうちに「覇気は使えて当然」という空気に変化していく。現れる敵のほとんどが普通に覇気を使い、ルフィの前に立ちはだかってくるのだ。特に覇王色の覇気は、数百万人に1人とされる「王の資質」を持った者にしか使えないとされていたので、当初のルフィには特別感があったが、それも他の覇気と同様に使用者が次々と登場していき、今やなかば当たり前のようになっている。
■『NARUTO -ナルト-』の写輪眼
『NARUTO -ナルト-』(岸本斉史氏/集英社)もまた、世界的な人気を誇る、『ONE PIECE』と並ぶ『週刊少年ジャンプ』の看板作品の1つである。その作中で登場する「写輪眼」は、うちは一族にしか使えないとされる瞳術だ。
相手の術をコピーしたり、チャクラを色で見抜いたりすることができるという写輪眼は、特定の血族の中だけで受け継がれる「血継限界」と呼ばれるものなので、その特別感とカッコよさにワクワクしつつ、うちは一族であるサスケもいずれは使えるようになると誰もが期待したはずだ。
実際に、サスケが写輪眼を開眼したことでバトル展開はどんどん面白くなっていった。しかし、のちにはそんな写輪眼を使える術者が次々登場するという事態が起きる。サスケの兄であるイタチはまだ納得できるが、黒幕であるマダラやオビトなど、死んだはずのうちは一族までもが登場したことで、写輪眼の希少さは失われてしまったとも言える。
そして、写輪眼から万華鏡写輪眼、永遠の万華鏡写輪眼とその能力も進化し、両目に万華鏡写輪眼を持つ者の一部にしか使えないとされる最強の術「須佐能乎(すさのお)」の使用者までもが増えていく。最終戦では、そんな須佐能乎を含め、貴重な写輪眼を用いた高度な術がたくさん飛び交うので、誰のどの術が強いのかもだんだんよく分からなくなってしまった。