『血の轍』『イグアナの娘』でも、あまりの描写にトラウマ…読んでるだけで胸がヒリヒリする「漫画が描く毒親」たちの画像
ビッグコミックス『血の轍』第1巻(小学館)
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 漫画には、親子の絆をテーマにした心温まる作品や泣ける作品が多い。その一方で、近年ではエッセイ漫画がいちジャンルとしての地位を確立しており、ほんわかとしたストーリーだけでなく、リアルな実体験に基づく機能不全家族を描く作品も増えてきている。

 また、ここ数年で「毒親」というワードが世間にもかなり浸透しており、漫画のようなフィクションの世界でも、虐待やネグレクトに過干渉など子どもにツラい思いをさせてしまう親キャラクターを描くケースが増えてきた。毒親たちの行動は読んでいるだけで胸が苦しくなってしまうようなものばかりだが、嫌悪感の反面で先が気になってしまうもの。今回は、強烈な「毒親」が登場する漫画をいくつか紹介したい。

 まずは『ビッグコミックスペリオール』(小学館)で連載中の押見修造氏による『血の轍』。主人公の長部静一の母・静子は物語開始当初、優しくて少し過保護な親として描かれているが、その表情や言葉からは「どうも普通ではない」不穏な気配が漂っている。

 そんな中、静子が静一の従兄弟・しげるを崖から突き落としたという決定的な出来事をきっかけに、親子の歪みはますます大きくなっていく。

 静一を心身ともに支配する静子の姿や、精神的ショックから吃音がひどくなりコミュニケーションが計れなくなっていく静一の姿は見ているだけでもツラい。果ては静一がクラスの女子からもらったラブレターを目の前で破らせたりと、どう考えても普通の親子関係とは思えない男女の関係を匂わせてくるのだ。

 自分が静一の立場だったらと考えるだけで息が詰まるのは、押見氏の繊細な筆致と構成力の高さのなせる技だろう。

 こうしたキャラは最近の漫画作品だけではなく、1996年に菅野美穂主演でテレビドラマ化もされた萩尾望都氏による『イグアナの娘』でも描かれた。

 同作は、実際には普通の人間の女の子なのに、自分と母親の目には自身がイグアナの姿に見えているという、醜形恐怖症にも似た症状に悩まされる主人公の青島リカと、娘を愛することができない母親の確執を描いた物語だ。

 一方で妹のマミは誰の目から見ても普通の人間の姿に見えるため、母はマミばかりを溺愛し、リカにはますます冷たく接してしまう。そのことが原因でリカは自分は愛されない、幸せになれないと思い込み、暗い性格に育ってしまうという負のスパイラルが心に迫ってくる作品だ。

 親の言葉というものは圧倒的な威力を持っているものである。時には子どもの自尊心を傷つけ、性格すらも歪めてしまう。こちらの漫画はハッピーエンドで終わるが、実際の世の中でも、イグアナに形容されることはないにしろ、親からの心ない言葉に悩まされ続けている人はかなり多いだろう。

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