■脱水症状間違いなし! 「水を飲むな」はまさに迷言だった
昭和の格言、いや、迷言だったのが「水を飲むな」だろう。今では考えられない思考回路といえる。だが、筆者たちの時代では普通に言われていた。喉がカラカラになるまで声を出し、体中から汗が出尽くしても水分補給は許されない。まさに過酷な環境なのだが、スポ根漫画の世界でも当たり前のように描写されていた。
『柔道部物語』(講談社)の主人公・三五十五が所属する岬商のライバル江南高校柔道部では、練習中に水を飲むことはご法度だった。水を飲んで殴られているシーンもあったな。
さらに、笑顔も許されない。これもあるあるだったなあ……。白い歯を見せたら、容赦なくバットが凶器となって飛んでくる。しかも、華麗に避けると「逃げるな!」と、さらに怒られるという無限ループ。今となっては笑い話だが、当時は野球が楽しくなかったな(笑)。親に相談しても「お前が悪い」と言われてしまう……なぜだ!
ハッキリ言って水を飲むのは喉が渇いているからであり、生物として自然なことだ。まあ、そんなことだからなんとか監督の目を盗んで水を飲もうと悪知恵が働いたものだ。令和の子どもたちには、ガンガン水を飲めと言ってあげたいぞ。
さて、令和では考えられない練習方法や考え方だが、当時の学生たちのなかにはこれにより精神力が鍛えられた人もいると思う。子どものころから読んでいる漫画の練習方法で主人公たちが強くなっていくのだから、真似してしまうのはある意味仕方なかったのかもしれないな。