■土壇場で逆転のチャンスをつかむ! 仲間の勇姿に感極まって涙する湘北・石井の思い
最後に紹介するのも、同じ湘北VS山王工業の試合中のシーンだ。作品全体のクライマックスでもあるこの試合には本当に名シーンが多いのだ。
試合の最終盤で桜木はケガをするも、限界ギリギリの状態で敵のシュートをブロック。そのルーズボールを拾った宮城と流川が、速攻を仕掛ける。
この速攻は河田と深津に阻まれるが、すでにバテバテながらも付いてきていた三井が、宮城からパスを受けて3Pシュートを決める。しかも、相手ディフェンスの松本からファウルをもらって、バスケットカウントでフリースローの権利も獲得し、ついに2点差にまで迫る。
その一連のシーンをベンチから見ていた石井は、感極まって「湘北に入ってよかった……」と涙しながら喜びを噛みしめる。その後、三井はフリースローも決め、スコアは76対75と1点差になり、残り時間約50秒にして、ついに湘北に逆転のチャンスが見えてくる。
このシーンで特筆すべきは、喜びに沸く湘北ベンチメンバーを後ろからとらえたアングルでコート内の両チームの選手たちの様子までを含めて、見開きページの大ゴマが取られていることだろう。感情が爆発する一瞬を切り取って、まるで本当にコートサイドから見ているような臨場感で、その中にあってポツリと呟く石井のセリフとの対比が見事な名シーンだ。
『SLAM DUNK』に限らずスポーツ漫画では、普段は主人公たちの陰に隠れてあまり見せ場のない控えメンバーが見せるアツい思いが、予想外の感動を呼ぶことも多い。今回紹介した3つは特にそういった思いが強く表れていて、筆者が個人的にとても好きなシーンだ。もちろん『SLAM DUNK』には、湘北の安田や陵南の彦一など、心昂ぶるシーンがほかにもたくさんある。『THE FIRST SLAM DUNK』を観てあらためて原作を読み直してみようと思っている人も多いだろうが、そういうシーンを意識しながら読んでみると、また違った魅力が見えてくるかもしれない。