「闇落ち」とは、明るく正義感が強く真面目なキャラクターが、ネガティブな感情を切っ掛けに“闇のパワー”に目覚めてしまう、おもに漫画やアニメなどフィクションでの展開をあらわした用語。この「闇のパワー」には、なぜか我々読者をワクワクさせてくれる謎の魅力が詰まっている。
たとえば、1996年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載開始された『遊☆戯☆王』を読んでいた読者は、闇の遊戯が登場するシーンを今かと待ち侘びていたのではないだろうか。また2006年10月よりスタートしたアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』は、主人公のルルーシュ・ランペルージが、誰にでも言うことを聞かせる力「ギアス」を手に入れ、妹のために悪に手を染めるというストーリーが人気を博し、歴代人気アニメランキングの上位に常に名を連ねている作品だ。
そこで今回は、たくさんの闇落ち作品の中から、主人公が盛大な闇落ちを果たした誰もが知る名作漫画を3つ紹介したい。
■ジャンプ史上最高に極悪な主人公
闇落ちの名作といえば2000年代の『週刊少年ジャンプ』を代表する漫画『DEATH NOTE』。主人公の夜神月は、頭脳明晰、スポーツ万能、性格も良く、人づきあいも上手い、いわゆる優等生と言われる人物である。そんな彼は、名前を書いただけで人を死に至らしめることが出来る「デスノート」を手にしたことによって、少しずつ闇に染まっていった。
最初は「手の込んだいたずらだ」と真面目に考えなかった夜神月だったが、ノートが持つ「人間なら誰でも一度は試してみたくなる魔力」によって、嫌がる女性に無理やり絡んでいた男の名前を書いてしまう。すると、なんとその男は夜神月の目の前で死亡してしまった。
ノートの力が本物であると確信した夜神月は、ある計画を実行に移す。それは「犯罪者を殺すことによって、犯罪のない理想の世界を作る」という恐ろしい計画だった。
ここから、夜神月は少しずつ変わっていく。理想の世界のために人を殺め続け、その眼光は次第に鋭くなり、人を思いやる優しい笑顔は、他人を嘲笑する悪意に満ちた笑みに変わっていった。
『DEATH NOTE』の驚くべき点は、夜神月の変化が少しずつ、しかし確実に、それでいて自然に描かれているところだろう。多くの読者は、第一部終盤でデスノートを手放し、ノートに関する全ての記憶を失った夜神月を見て驚いたのではないだろうか。
そこにいたのは、頭脳明晰でスポーツ万能な、家族や友人を大切にする優等生そのものの月。「人を自由に殺せる力」の本当の恐ろしさを否が応でも思い知らされる名シーンだ。