一部の作品を除いてガンダムといえば、圧倒的な力を持ついわばメインキャラが乗る機体であることがほとんどだ。その圧倒的さがかっこよく、どんな活躍を見せるのかと次の展開を期待する。しかしその力を表現するときには、必ず犠牲になっているモブキャラたちがいることを忘れてはならない。
今回は、敵目線で見れば恐怖すら感じてしまう、エースパイロットたちの猛攻撃が表現されたシーンをいくつか紹介しよう。
■一年戦争の明暗を分けた日「迫りくるガンダム」
今回のテーマでまず外せないシーンといえば、『機動戦士ガンダム』第1話より、ガンダムが初めて起動したシーンだ。
地球連邦のコロニー・サイド7に偵察のため侵入してきた3機のザク。そのパイロットの1人であるジーンが功を焦って偵察任務を放棄し、戦艦に輸送中だった連邦のMSのパーツを襲撃。アムロはその襲撃に巻き込まれ、応戦するために新型のMS・ガンダムに搭乗した。
ジーンは動きが鈍いガンダムに対しザク・マシンガンを先制で放つが、ガンダムの強固な装甲に歯が立たず驚愕する。すでに汗びっしょりなジーンだが、未だ動きが鈍いガンダムに対し「やってやる…。いくら装甲が厚くたって!」と心なしか涙目でじりじりと近づいて行く。対するアムロも初めての戦場で恐怖の表情を浮かべるが、近づいてきたザクの口元をつかみ、突き飛ばすような形でパイプごとちぎってみせる。
ジーンは、自身の戦果のため作戦を無視してまで急襲したパイロットとは思えないほどに絶叫し、上官のデニムの助けを得て撤退しようと飛び上がる。しかし戦場において背を向けたが最後、ジオン兵にとってまだ謎に包まれたMSが、ビーム・サーベルを携えて突進してくるのだ。すでに戦意を喪失していたところに容赦なく突進してくるガンダムを見たジーンは、まるで楳図かずおの作品に登場するキャラクターばりの恐怖の表情と悲鳴を上げ、真っ二つにされてしまう。
と、少々コミカルさを交えて紹介したが、実際の戦場において生きるために撤退の選択肢をとったにも関わらず、容赦ない追撃を受けた時の恐怖は、今を生きるほとんどの人にとっても計り知れないものだろう。
■突きつけられる巨大な剣と死の恐怖「ミン中尉の最期」
続いて、我々が生きる西暦の時代を舞台にしたシリーズ『機動戦士ガンダム00』より、ハレルヤ・ハプティズムになぶり殺されるミン中尉を紹介したい。
世界各地のあらゆる紛争に武力をもって介入し、戦争の根絶を目的として活動するソレスタルビーイング。その4機のガンダムを鹵獲するため、人類革新連盟が周到な作戦をもって攻撃を仕掛けてくる。しかしガンダムの隠された力によって作戦は失敗。撤退する人革連のセルゲイ・スミルノフの部隊の前に、狂気的な人格を持つハレルヤが乗るガンダムキュリオスが立ちふさがる。
人革連の主戦力であるセルゲイと強化人間のソーマ・ピーリスを撤退させるため、ミン中尉がその身を賭してキュリオスと対峙するのだが。
ハサミのように展開するキュリオスのシールドにあっさりと捉えられたミン中尉。「いつかお前たちは報いを受けるときがくる…!」と死の間際にありながらハレルヤに強気な発言をして見せる。
そんなミン中尉にハレルヤは無慈悲にもGNシールドニードルを突き立て、逃げ場のないコックピットにじわじわと剣を刺し込んでいくのだ。確実に迫りくる巨大な剣と実感する死の恐怖に怯えたミン中尉は、悲鳴とともに「やめてくれえぇぇぇ!!!」と絶叫する。
まるで自らの死の瞬間が見えるかのようなこの残酷な演出に、リアルタイムで観ていた視聴者であればショックで夕飯が喉を通らなかったという人も多かったのではないだろうか。