■30年を経て明らかとなったケンシロウ、ショウザとの秘談

 ラオウ亡きあと、黒王はケンシロウ、ユリアとともに旅に出る。やがて「天帝編」でケンシロウを乗せて再び現れたときには、片目を失っていた。この間のエピソードは本作では描かれていないが、『北斗の拳』30周年記念の際に描き下ろされた『北斗の拳−LAST PIECE−』で公開された新エピソード「我が背に乗る者」で明らかとなっている。

 ユリアを亡くしたあとのケンシロウは、岩にユリアの面影を彫り続けるだけの空虚な日々を過ごしていた。そんなケンシロウを見守っていたのが、ジュウザの息子・ショウザだ。彼は、ケンシロウが再び黒王の背にまたがるときを待ちながら、黒王の背を洗い続けていた。

 あるとき、ショウザの村が襲撃を受ける。黒王はケンシロウをどうにか焚きつけようとするが、彼の心はまだ動かない。さらわれた子どもたちを助けるため、黒王にまたがって戦いに出向いたショウザ。黒王の背に乗って戻って来たときには、変わり果てた姿となっており、黒王自身も全身に矢傷を受け、左目に矢が突き刺さっていた……。

 ”おまえが動いていれば、こんなことにはならなかった”とケンシロウを責めるのはたやすい。しかし黒王はそれでもなお、ケンシロウに背中を預けようとした。これにはさすがにケンシロウも涙し、再び魂を呼び戻すことになったのだった。

■一人前の漢に成長したバットと、ラオウの忘れ形見リュウ

「修羅の国編」では、ケンシロウはさらわれたリンを追って修羅の国へ。物語の後半に入ると、それをさらに追うバットが黒王に乗って登場した。思えばケンシロウがラオウとの最後の戦いに赴くときも、黒王はまだ子どもだったリンとバットを乗せていた。あのとき手綱を握っていたのはケンシロウだが、今度は成長したバット自身に手綱を取らせている。黒王なりにバットのことも一人の漢として認めたということだろう。

 修羅の国での戦いが終わり、ケンシロウと黒王はラオウの息子・リュウのもとへ。ケンシロウはリュウを黒王の背に乗せ、「おまえの父 ラオウの馬だ‼」と伝える。リュウもまた「こんな馬に乗るなんてオレの父さんは大きかったんだ‼」と、黒王を通して姿を知らぬ父に思いを馳せた。このとき、黒王もまた、リュウを通して亡きラオウを思っていたのだろうか。

 

 黒王号の最期ははっきりとは描かれていない。しかし、リュウが幼くして成長を遂げるのを見守ったのち、ケンシロウとともに嵐のなかを歩んでいた黒王は、突然歩みを止めて動かなくなる。それまで荒かった呼吸も静かに。ケンシロウが「こ…黒王…」「お…おまえ‼まさか…」と言った直後、落雷に遭ったのを最後に黒王は登場していない。

 もしこれが黒王の最期だとしたら、まるで仁王立ちで生涯を全うしたラオウのようだ。まさに人馬一体となって世紀末を駆け抜けたラオウと黒王号。“主と馬”というよりは、“盟友”と呼ぶほうがふさわしいのかもしれない。

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