『北斗の拳』人を踏みつける巨躯と威風…ラオウの愛馬「黒王号」が“背を許した漢たち”の画像
『北斗の拳』究極版 第11巻(コアミックス)

 今年で連載開始から40周年の節目を迎える、武論尊氏(原作)、原哲夫氏(作画)による『北斗の拳』。本作には読者の心を熱く震わせる漢たちの姿が描かれてきたが、ラオウの愛馬「黒王号」もまた、そんな漢の一人(一頭)である。象ほどもあろうかという巨体で人を踏みつけ、並みの軍勢なら軽く蹴散らしてしまう黒王は、自分の認めた者以外には決してその背にまたがることを許さなかった。彼が背を許したのは、いったいどんな漢たちで、彼らの間にはどんなエピソードがあったのだろうか。

■王の生き方を示したラオウ

 ラオウと黒王の厚い信頼関係は言う間でもない。マミヤの村でケンシロウと相討ちになったラオウを部下はいち早く見限って逃げ出したが、黒王だけはその傍に寄り添い続けた。ラオウもまた、ユリアの死に際して胸の内を打ち明けるほど、黒王には心を許している。

『天の覇王 北斗の拳 ラオウ外伝』では、ラオウと黒王の出会いが描かれている。黒王は“黒王谷”で千頭の野生馬を束ねる王だった。怪我した仔馬をかばいながら虎と戦う黒王を見たラオウは、群れを率いる王たる者がたった一頭の仔馬のために身を挺することを一喝し、死にかけた仔馬にとどめを刺す。黒王は怒ってラオウを蹴とばし、虎を撃退したあとも怒りは冷めやらぬ様子を見せたが、自身の渾身の一撃にも耐えたラオウを認めると力を貸してほしいという頼みを聞き入れて背中を預けることにした。

 相手が馬であっても同じ王として認め、その道を示したラオウ。互いに認め合った者同士だからこそ、そこに強い絆が育まれたのだろう。

■ラオウ以外にはじめて背を許したジュウザ

 飄々とした性格が魅力的な、南斗五車星の一人“雲のジュウザ”。彼はラオウとの戦いの最中にひらりとジャンプすると、そのまま黒王の背に飛び乗った。振り落とそうとする黒王だったが、瞬時にいなされ、ラオウのもとから奪われてしまう。

 このときのラオウは、部下が代わりに車を用意するも「おれが体をあずけるのは黒王号のみ」と言って断っている。自分以外の者を乗せたとあっても、黒王への信頼は揺らぐことがない。

 そして最後の対決でラオウに敗れ、息絶えるジュウザ。黒王はその傍で頭を垂れ、しきりに前脚で地面を掻く。ラオウはそんな黒王を責めるどころか「ここに葬ってやろうというのか黒王……」と気持ちを汲み取り、ジュウザを丁重に葬るよう部下に命じた。

 南斗最後の将のため死を賭して挑み、最期まで自由な意志を貫いたジュウザの生き様を、ラオウもまた評価していた。自分が認めた相手に惜しみない敬意と情を示すのは、ラオウも黒王もよく似ていると思う。

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