■パワハラを訴える間もなく死が待っている「赤犬」

 最後に紹介するのは根っからの仕事人、海軍本部元帥の赤犬である。

 どんな業務も徹底的に遂行しようとするその姿勢は、組織の運営においては重宝されることだろう。しかし人情を持ち合わせないその業務方針には、藤虎のように一部の部下が不満を募らせてしまうことも否めない。

 赤犬が大将だったころに勃発した「頂上戦争」では、負傷者を顧みず攻撃を続ける海軍を止めるために割って入ったコビーを、邪魔だからと容赦なく殺害しようとした。コビーなりの正義を貫こうとした結果、上司である赤犬の意向にそぐわないからと殺されそうになってしまうとは、まさしくパワハラの究極系と言えるだろう。戦時下という極限状態ではあったものの、戦いの中で命を落とすのではなく上司の逆鱗に触れて命を落とすなど、ばかげた話である。

 元帥の座に就く赤犬は海軍内の地位ではトップであるものの、世界政府最高権力の五老星の前ではあくまでも部下に過ぎない。五老星からの圧力と、部下や市民からの圧力に板挟み状態とあって、中間管理職としての立ち回りのつらさにストレスを抱えるのもわからなくはないが、明らかにそんな上司の下で働くのは御免被りたいところである。

 

 敵対勢力と命のやり取りをしている時点で、一定の「死」のリスクが付きまとう『ONE PIECE』の世界だが、まさか上司からも殺される危険性があるとは予想もしていないことだろう。不憫なモブキャラたちの労働環境改善のために、少なくとも上司は部下に手をあげない、という最低限の契約書面の交付を義務付けてあげてほしいところである。

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