多くの人にとって「声優」の仕事とは、アニメなどの吹き替えやナレーションなど「声」を使ったいわば裏方のイメージがあったはず。ところが近年、ドラマやバラエティなどで話術や演技力を活かして大活躍するケースが多く、すっかりお茶の間にもなじみ深い職業となった。
たとえば『美少女戦士セーラームーン』の月野うさぎや『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの葛城ミサト役でも知られる声優の三石琴乃は、2024年放送のNHK大河ドラマ『光る君へ』に、藤原道長の母・時姫役で出演する。三石は2021年の北川景子主演のTBS系ドラマ『リコカツ』では、北川演じる主人公の母親役として出演。同作が連続ドラマへの初レギュラー出演だったが、どこか自由奔放なところもある、美しい母親役がピッタリで、彼女を演じているのが「うさぎ」や「ミサト」の三石とは気がつかなかったという視聴者も多いのではないだろうか。
■艶ある低音イケボを武器に存在感を発揮
俳優として活動の場を広げている声優は少なくない。ファンから「ツダケン」の愛称で親しまれている津田健次郎もその一人だろう。
津田は、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の海馬瀬人をはじめ、『呪術廻戦』七海建人や『ゴールデンカムイ』尾形百之助など、癖のある寡黙なキャラや敵役の声が多い声優。その一方で、『TIGER&BUNNY』のファイヤーエンブレムや『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』のキリンなど、多種多様な役柄をその独特な低音ボイスで演じ分けている実力派だ。
そんな津田は、もともとは舞台俳優としてキャリアをスタートさせているが、お茶の間にその存在が一気に知られたのはナレーションを務めた2020年前期のNHK連続テレビ小説『エール』ではないだろうか。同作で津田は、第1話から朝ドラの語り役として出演していたが、第20週「栄冠は君に輝く」第97回では俳優としても出演。山崎育三郎演じる久志の麻雀仲間の役で、サプライズ的な顔出し出演となったが、「こんな顔をしていたの」と話題になり、声だけしか津田を知らなかったという視聴者を大いに驚かせた。
以降、ドラマや映画、そしてCMにバラエティまで幅広く出演している津田。2022年4月の『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』に始まり、『オールドルーキー』『クロサギ』、そして2023年1月の『リバーサルオーケストラ』まで、この1年を振り返っても各クールのドラマに出演し続けている。声とルックスで多くのファンを魅了し、舞台や映像監督としても活躍している津田はまさにマルチな才能を持つ俳優といえるだろう。
■平成のガキ大将を演じるスバにぃが戦国武将に
また声優だけでなく、タレントとしても大活躍なのは、映画『THE FIRST SLAM DUNK』で令和版・桜木花道の声を担当する木村昴だ。
木村といえば2005年にテレビアニメ『ドラえもん』のジャイアン役を、たてかべ和也さんから当時中学生という若さで引き継いだ声優。その6年後に幾原邦彦監督のテレビアニメ『輪るピングドラム』で高倉冠葉を演じたことを切っ掛けに声優としての転機をむかえ、『ハイキュー!!』の天童覚や特撮ドラマ『仮面ライダーリバイス』のバイスなど多くのキャラを担当。またキャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』では山田一郎役を担当しており、音源発表やライブ活動など、ラップ好き声優として同プロジェクトを牽引し続けている。
だがその活動は声だけに留まらず。2020年より子ども番組『おはスタ』で「スバにぃ」としてメインMCを、『ヒルナンデス!』では木曜レギュラーを、『バナナマンせっかくグルメ!!』では食いしん坊声優として明るいキャラクター性を存分に発揮しており、朝から晩まで見ない日はないほどの大活躍だ。また2022年の『鎌倉殿の13人』で以仁王(もちひとおう)役、『どうする家康』で武将・渡辺守綱役と、2年連続でNHK大河ドラマにも出演しており、視聴者層によって「声優の木村昴」「タレントの木村昴」「俳優の木村昴」と木村昴のイメージは大きく違いそうだ。