悪役キャラには、悪の美学というものを持って正々堂々と戦う者もいれば、卑劣な行為に及ぶ者もいる。いずれも主人公を突き動かすために行っている行為でもあるが、中には度を超えた外道のような煽り方もあるのだ。そのひとつが、恋人を略奪する行為ではないだろうか……。
主人公の愛する女性に対して、主人公が最も嫌がる行為を目の前で行う。それは恋愛漫画ではなく、バトル漫画でも同じこと。恋愛の奥深さも知らない少年読者たちですらその行為がどれだけ酷いことかは分かるもので、読んでいて不思議と憎たらしさを感じてしまうのだ。そこで今回は、『週刊少年ジャンプ』の中から、敵キャラが見せた許すまじ外道行為を振り返りたい。
■ケンシロウからユリアを奪ったシン
原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による『北斗の拳』では、悪役が理不尽な暴力を次々と繰り広げたことで、読者がイラつく場面が何度もあったはずである。「力こそ全て!」これが核戦争によって滅びた世界の末路だが、そんな状況でも特に許せない場面があった。それが、南斗孤鷲拳の使い手であるシンによるユリアの略奪だ。
北斗と南斗は争ってはいけない……そんな掟を守りケンシロウはシンとの戦いを拒むが、シンはそんなことは関係ないといった様子。迷うケンシロウが実力を出せるはずもなく、シンにあっさりと倒されてしまったシーンはかなりショックだった。しかもその後の仕打ちが酷い。シンはケンシロウを無理やり起こすと、胸に七つの傷をつけていき、ユリアに自分のことを愛していると強制的に言わせたのだ。
そうしなければケンシロウが助からないという思いから、ユリアに選択肢はなかった……。この瞬間、多くの読者の怒りは頂点に達したのではないだろうか。筆者は「フハハハハ 女の心がわりはおそろしいのぉ!!」と高笑いしてユリアを奪い去るシンの姿を見たときに、思わず拳を握りしめてしまったほどだ。ここまで煽り倒したキャラも非常に珍しいと思う。