■攻撃的になる自分に悩む純朴な青年『蒼穹のファフナー』真壁一騎

 2004年に放映された『蒼穹のファフナー』は、人類と未知の生命体“フェストゥム”との戦いを描いたロボットアニメである。その高い人気から数々のOVAや映画作品が展開されている。

 本作の主人公を務めるのが、思考制御・体感操縦式有人兵器・“ファフナー”のパイロットとなる少年・真壁一騎だ。パイロット育成の被験者として誕生した“デザイナーベビー”の一人で、並外れた身体能力を持つ。

 過去の経験から暗い影を持ち、協調性には乏しい部分もあるが、根本的に性格は優しく素直。非常に主人公然としたキャラクターではあるものの、一方で“ファフナー”に搭乗すると、性格が攻撃的なものへと一変する。

 ただしこれは一騎だけではない。“ファフナー”に搭乗するパイロットはみな、機体に搭載された“ニーベルング・システム”によって脳を刺激され、戦闘に不要な同情などの感情を消し去り、攻撃衝動を呼び起こされてしまうのだ。

 いわば、搭乗する人間を強制的に“戦士”へと変貌させるシステムは、未知の生命体を相手取るうえでは有利に働くものの、戦闘時と普段との精神状態のギャップに一騎は悩まされることとなる。

 本作ではロボットを使った戦闘シーン以外にも、“ファフナー”に乗るキャラクターたちの精神的な葛藤や群像劇も見どころの一つとなっている。一騎の苦悩や葛藤を通じ、視聴者も思わず“戦い”というもののいびつな側面について考えさせられてしまう、なんとも重くシリアスな一面を持つキャラクターだ。

 

 現実世界では車のハンドルを握ると性格が変わる……なんて話を聞いたりもするが、ロボットアニメの世界にも、搭乗するだけでさまざまな豹変っぷりを見せるキャラクターたちが搭乗する。性癖のため、隠された人格のため、ロボットのシステムのため……キャラクターたちが持つその“二面性”もまた、強烈な個性として彼らを印象付けている。

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