■『ベルセルク』より、誰も使えない大剣を作った鍛冶師ゴドー
「それは剣というにはあまりにも大きすぎた 大きく 分厚く 重く そして大雑把すぎた それは正に鉄塊だった」。三浦建太郎氏の漫画『ベルセルク』でそうナレーションされる主人公・ガッツの大剣を制作したのが、老刀鍛治のゴドーなる人物。
彼は、時の領主から「ドラゴンを殺せる剣」を依頼されていた。そうは言っても、ドラゴンなんてものはそもそも存在しない架空の生物で、「ドラゴンを殺す」というのも物語の中でのこと。領主からの依頼は、そんな夢物語に登場するような、英雄が携える聖剣と呼ぶにふさわしい美しい剣を、というものであった。
だが、そんな含みを丸っと無視して、ゴドーが“やっちまった”結果生まれたのが大剣「ドラゴンころし」である。文字通りドラゴンを殺すにふさわしい重量と破壊力を備えた「ドラゴンを殺せる剣」が出来上がった。
ゴドーが依頼主の真意を理解していなかったはずはなく、領主が激高するのも無理からぬこと。そしてこの一件で街を追われたゴドーは、以来この剣を「自分への戒め」として、蔵に保管していたが、「誰も使うことのできない剣」を作り上げた彼もまた尋常ならざる刀鍛冶といえるだろう。
2023年現在、創作作品において「身の丈を越える巨大な剣」は珍しくない。『ファイナルファンタジー7』のクラウドの持つバスターソード、『モンスターハンター』シリーズの大剣のように、ゲームでは割と一般的な武器カテゴリーになっている。それほど、「ドラゴンころし」ひいては『ベルセルク』が後世の作品に与えた影響は大きいだろう。
「やっぱり死ぬ時ゃ一人 前のめりってのがいい」「生きてる奴がなんで生きとるんだかわからんくらい オレにもなぜぶっ叩いとるのかわからんわい」 など名言も多いゴドー。領主の依頼を無視して勝手に作った「ドラゴンころし」だが、その生き様と彼の作った剣のかっこよさに痺れてしまう。
物語に登場する武器職人は、主人公やライバルキャラとはまた違った魅力がある。今回紹介した3人のように、多少ぶっ飛んでいても何かひとつの道を極める人に憧れてしまうという人も少なくないのではないだろうか。