少年漫画では、主人公や主要なキャラクターたちと深くかかわる「ちびっ子トリオ」がたびたび登場する。ときにトラブルメーカーであり、ときに心を癒してくれる無邪気な彼ら。今回は、そんなちびっ子トリオが登場する作品を紹介するとともに、泣かせるエピソードを紹介していきたい。
■『機動戦士ガンダム』ホワイトベースのカツ、レツ、キッカ
『機動戦士ガンダム』に登場するちびっ子3人組といえば、「カツ」「レツ」「キッカ」だろう。この3人が活躍する第30話「小さな防衛戦」は、ホワイトベースの処遇が決められていく裏で、シャアとジオン軍の工作員によりジムの工場内に爆弾が仕掛けられてしまうという話だ。
子どもであるためにホワイトベースから降りてジャブローに残るよう言い渡される3人だが、彼らはなんと施設を抜け出してホワイトベースに戻ることを選択する。脱走の道中、工場内で爆弾を仕掛けられたジムのなかからガンダムを見抜き、爆弾を取り除いてホワイトベースのみんなに知らせに行く大活躍を見せ、結果的に3人はホワイトベースに残ることが許可されたのだった。
ジャブローの施設からの脱走は、戦争で両親を亡くした3人の自立心と決意のあらわれであったように思う。ガンダム最終話ではニュータイプの片鱗を見せる彼らの姿が描かれていたが、幾多の死戦を潜り抜けるなかで、ホワイトベースの人々との間にできた絆を糧として心も体も成長していったのだろう。
殺伐としたホワイトベースをときに和ませていた彼らだが、まだまだ小さな子どもたちがそんな境遇に置かれてしまうこと自体、まさに戦争のリアルが描かれているように思う。
■『ONE PIECE』ウソップ海賊団のピーマン、たまねぎ、にんじん
尾田栄一郎氏による『ONE PIECE』に登場したのは、「ピーマン」「たまねぎ」「にんじん」の3人組。
“麦わらの一味”の狙撃手であるウソップの故郷・シロップ村で、彼が率いる「ウソップ海賊団」の一員だったのがこの3人だ。“海賊団”と名乗っているものの、ウソップを中心とした悪ガキの集まりでしかないのだが……。
初登場時はまだ9歳だったピーマン、たまねぎ、にんじんは「執事」を「羊」と呼んだり、「(ウソップを)食っちまった」と言うゾロの冗談に気絶したり、シロップ村に攻めてきたクロネコ海賊団にフライパンやスコップなどで立ち向かおうとしたり……と、生き生きとした子どもらしい様子が描かれていた。
日常的にホラを吹きまわっていたウソップはしょっちゅう村人から追いかけ回されていたが、彼らは子どもながらにウソップのつく“嘘”が決して人を傷つけるものではないことを理解しており、3人ともそれぞれの理由でウソップを尊敬している。
クロネコ海賊団から命を狙われたカヤを守るため3人で奮闘する姿は、健気そのもの。ウソップとの約束を守ろうと敵に立ち向かっていく3人の姿に、強い信頼関係がうかがえる。
海賊として旅に出る決意をしたウソップは「ウソップ海賊団」の解散を宣言するのだが、3人は彼の意志を引き継ぐかのように、ウソップが村を出たあとも自警団として村中にホラを吹いて回るのだった。
ウソップとの別れの際、それぞれ夢を語っていた3人だが、いつかその夢は叶うのだろうか。ぜひ、“その後”を見てみたいものである。