『機動戦士ガンダム』で主人公らが乗る戦艦“ホワイトベース”は、その乗組員のほとんどが実戦経験ほぼゼロの素人である。にもかかわらず、サイド7からホワイトベースに搭乗していた初期乗組員で戦死したのはパイロット候補生のリュウ・ホセイのみだった。
連邦・ジオン双方から「ニュータイプ部隊」と噂されていたホワイトベースだが、実際のところはどうなのか。初期乗組員のパイロットを中心に、そのポテンシャルを考察した。
■ずば抜けたニュータイプパイロット「アムロ・レイ」
言うまでもなく、ガンダムのパイロットであるアムロ・レイはニュータイプの先駆けだ。覚醒も何も、超高性能の軍事兵器を初見で操り、相手のコックピットのみを的確に狙って突き刺すという芸当をやってのける時点で既に普通ではない。
メカオタクとしての操作知識やそれに基づく勘があったとしても、それ以上に並外れた反射神経や空間認識能力、直感なしにこんなことはできないだろうから、やはりアムロのニュータイプ度はずば抜けていると言えるだろう。
ホワイトベースの戦いは常にアムロが最前線で、すべての重圧を背負い続けてきた。ほかの民間人パイロットたちが一年戦争を生き抜いたのも、彼らの実力はもとより、アムロとガンダムの力で負担が軽減したことも大きいのではないだろうか。
■ミハルの死後目覚ましい活躍を見せた「カイ・シデン」
“カイ・シデンは、ミハル・ラトキエの死後ニュータイプに覚醒したのではないか?”という議論をネットなどで見かけることがある。その理由は第28話のラストシーンで、死んだミハルの声を聞いている描写があるからだ。
カイはもともと洞察や直感に優れているし、素質はあるのかもしれない。しかし、作中でアムロ、ララァ、シャア、セイラに見られたような稲妻が走るような感覚をカイが得ることはついぞなかった。
ミライのようにララァのサイコミュに反応することも、カツ、レツ、キッカのようにアムロの居場所を感じ取ることもない。そう考えると、あのミハルの声はニュータイプ覚醒によるものというよりは、カイの思いを映し出したものだと考えるのが妥当な気がする。
ミハルの死後、カイの戦績は目覚ましく、最終的なMS撃墜数は20機を超える。それは彼が“打倒ジオン”を強く意識し、戦う決意ができた証でもあるだろう。
思えば、普段から素行が悪い面が目立っていたカイだが、これは意識的ではないにせよ彼なりの生存戦略なのかもとも思える。周囲から期待されなければ、重圧を背負わされることもないからだ。カイが生き延びたのは、もしかしたらそういった要領の良さによる部分も大きいかもしれない。
■勘の良さと度胸を兼ね備える「ハヤト・コバヤシ」
ハヤト・コバヤシもまた、カイと同等の戦績を残した優秀なパイロットだ。一度砲台の操作を教わっただけで「できますよ」と言ってガンタンクで出撃したあたり、勘の良さと度胸とを兼ね備えている。
しかし第27話でカイの代わりにガンキャノンに乗ったときは大苦戦、第35話のソロモン攻略戦でも負傷。どことなくパッとせず、自身も“カイやセイラにかなわない”と認めている。また、このときすでに誰の手も届かない存在になっていたアムロに対し、まだ対抗心を見せており、フラウ・ボゥに“アムロは私たちとは違う”と諭されるなど、鈍さも否めない(本当に分かっていないというよりは、どうしても認めたくないほうが強いのだろう)。
ただ、GファイターやGスカイ・イージーではアムロと息ぴったりなところも見せている。柔道家ということもあって、相手の呼吸を読むことは得意だと思われる。