■『ゴールデン・デイズ』が描く「毒親」
続いては2005年から2008年まで連載された高尾滋氏による『ゴールデン・デイズ』。
これは、過保護な母を持つ男子高校生・相馬光也が入院中の曾祖父の危篤の連絡を受け病院に行ったところ、地震にあい約70年前の東京にタイムスリップするという話。大正時代で光也は「記憶喪失の自身の曾祖父」として生活し、危篤状態の曾祖父の願いを叶えようとするファンタジー漫画だ。
同作は、1話で描かれた光也と母親の関係がとにかくつらい。光也は14年前に誘拐された過去を持ち、それが原因で母が異常なほど過保護になってしまった。趣味のバイオリンでの留学も夢見ていたが、母親はそれに猛反対し自宅の浴室でリストカットをして自殺未遂まで起こしてしまう。
その後も自由に出歩かないように光也の自転車を捨てたりと、いわゆる「毒親」っぷりがストーリーの序盤で何度も描かれる。過保護な親を持つ人には、この苦しみがわかるだろう。
もっと規模の大きい話だと、1986年から1994年まで連載された日渡早紀氏の『ぼくの地球を守って』も、壮大な世界観と地球を巡るシリアスな課題が人気の名作だ。
同作は主人公・坂口亜梨子をはじめとする前世の記憶を持つ7人の男女が現代日本に転生し、現代日本と前世の出来事を行き来する21巻にわたるSFストーリー。
前世の彼らの故郷は戦争で滅亡しており、その後彼らも伝染病で全員死亡したことが次第に明らかになる。連載当時は正に世紀末で、戦争や自然破壊などの問題も取り沙汰された時期だけに、前世や宇宙、超能力など規模の大きい話であっても夢中になって読むことができたのではないか。
なお『ぼく地球』は連載終了からかなりの年月が経っているが今なお当時の読者に愛される作品。2022年には日渡氏の画業40周年を記念しての東京タワーでのイベントや、2023年3月11・12日には埼玉で『ぼくの地球を守って LIVE 〜BRIDGE of LIGHT〜』が行われた。
ときには目を覆いたくなるシリアスな世界観を持つこれらの作品。しかし、作品の伝えたいメッセージや、この作品によって救われた気持ちはいつまでも我々読者の心に暖かい灯として点り続けている。