1974年の創刊以来、月2回の発行誌として現在も愛されている少女漫画雑誌『花とゆめ』(白泉社)。長期連載された有名作品としては『パタリロ!』や『ガラスの仮面』などがあり、連載陣もバラエティに富んでいるが、中でも他の少女漫画誌との違いはファンタジー作品が多い傾向があることが挙げられるだろう。
そして、このほかにも『花とゆめ』に連載される作品には、他とは一線を画したシリアスな世界観を持つものも多い。大人が読んでも言いようのない憐憫の情を抱いてしまうような「鬱展開」に、ギュッと胸が詰まってしまう。
そこで今回は、『花とゆめ』で連載されたシリアスな世界観を持つ漫画を紹介したい。
まずは、これまで2001年と2019年に2度アニメ化された名作、高屋奈月氏による『フルーツバスケット』。1998年から2006年まで連載され、長らく同誌の看板作品であった。
あらすじは唯一の家族だった母親を事故で亡くした主人公・本田透が十二支の不思議な呪いにかけられた草摩一族の面々とふれあっていくストーリーであるが、そこにはトラウマと対峙する登場人物たちの悩みや悲痛な過去が多く描かれる。
例えば、馬のもののけつきである草摩依鈴は自分の一言が原因でかりそめの穏やかな家族関係にヒビが入り、両親に虐待された過去があり、その後も精神が不安定になって入退院を繰り返している。
虎のもののけつきの草摩杞紗は、呪いの影響で髪と目の色が普通とは変わっており、それが原因で学校でいじめにあう。その結果失語症を患い、入学したばかりの中学に行けなくなるなど、どれも一筋縄ではいかない体験ばかりだ。
だからこそ、透が彼らの悩みに持ち前の優しさで寄り添い、十二支つきの面々が自分自身を見つめ直して新たな一歩を踏み出していく様子には、涙が止まらないほどの感動があった。
しかしそんな透自身にも重い過去がある。彼女の母親は事故で亡くなっているが、その事故の加害者の娘の彼氏が、自分の彼女を思いやるばかりに、母親が死んだばかりの透に葬式で「お前の方が不幸だと勘違いするな」と言ったのだ。
事故加害者の娘と被害者側の娘、どちらが悪いというわけではないので、ただページを読み進めるだけでもしんどさがあった。『フルバ』にはこのようなどうしようもないシーンが多数登場するのだ。