原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による漫画『北斗の拳』(集英社)は、累計発行部数1億部を超える人気バトル漫画。その魅力は、力ある者が全てを支配する荒廃した世界の中で、北斗神拳や南斗聖拳など、様々な武術を駆使して覇権を握ろうとする者たちの戦いにある。
力によって序列が形成される社会だからこそ傍若無人に振る舞うキャラクターも多いが、そのほとんどは雑魚キャラとして、やられることを前提に登場しており、そのやられ方にも多様なパターンがある。『北斗の拳』の代名詞とも言える断末魔の声「あべし!」とともに死んでいった雑魚キャラも、一瞬の登場にもかかわらず、印象深い叫びとともに記憶されている。
同様に、名乗りすらしていないのに妙に記憶に残ってしまっている様々な個性を持つ雑魚キャラたちの中から、特に強く印象に残っている者たちを紹介していきたい。
■「汚物は消毒だ~!!」を生み出した名も無きモヒカン男
まずは、南斗鳳凰拳の伝承者サウザーに仕える聖帝軍兵士の雑魚キャラ(単行本10巻に登場)。この男は、サウザーが通る道にひれ伏す人間を監視するような役割を務めていて、ひれ伏さない人間がいるとそれを許さず、「汚物は消毒だ~!!」と叫び、いきなりその人間に火炎放射器で炎を浴びせてしまうのだ。
それを見た周りの人間は怯えてしまうが、ケンシロウは気にした様子もなく雑魚キャラに近づき火炎放射器を奪い取ると「おまえのいうとおりだ」「汚物は消毒すべきだな……」と逆に炎を浴びせ、この男を焼いてしまう。
このセリフ「汚物は消毒だ~!!」は、アニメはもちろん、パチンコやパチスロでの演出として使われたほか、近年では『北斗の拳』世代ではない人にもネットミームとして親しまれたりもしている。原作ではたった数コマしか出てこないにも関わらず、これほどまでに有名なキャラクターになったのは、それがあまりにもキャッチーなフレーズであったからではないだろうか。
■出オチのインパクトがすごすぎる愛されキャラ“でかいババア”
続いては、『北斗の拳』の雑魚キャラの代表格とも言えるキャラクター、通称“でかいババア”だ。単行本第8巻で登場するこのキャラクターは、とにかく見た目のインパクトが衝撃的だった。
ケンシロウがカサンドラからトキを救出するも、トキは病に侵されていたので長距離の移動に耐えられなくなってしまう。そこで目に入ったのが、でかいババアの潜む小屋だった。
でかいババアはラオウの手下で、ケンシロウを抹殺するためにバレないように変装して待ち構えていたのだ。そして、狙い通りにケンシロウたちが小屋に足を踏み入れると、奥からゆっくりと姿を現す。
身長3メートルはありそうな大きな老婆は、穏やかな笑みを浮かべているものの、どこからどう見ても違和感だらけ。マミヤがその姿に戸惑いながらも「み…水を一杯いただけたらと……」と尋ねると、でかいババアは快く聞き入れてすぐに水を用意する。しかし、ケンシロウは落ち着き払って出された水を見るなり「ばあさんその水のんでみろ」と求める。冷や汗をかきつつ躊躇うババアに、ケンシロウは「なぜのめん」とさらに追い打ちする。
すると無数の槍がでかいババアの体から飛び出し、天井から伏兵の雑魚が現れ襲いかかってくるが、ケンシロウとトキはそれを見抜いて攻撃をあっさりと回避する。
「おれの変装をみやぶっていたのか~!!」と驚くでかいババアだったが、ケンシロウは顔色ひとつ変えることなく「おまえのようなババアがいるか!! 拳王の手下だな」と返し、瞬殺してしまった。
面白いのがマミヤの反応で、水を出される前には普通に会話しており、倒した後も「ラオウの部下だったのね…」と本気で驚いていたところ。こんな誰でも気づけそうな変装にも気付かない天然キャラだったのか。