■これは“暴力”ではなく“修正”である…ウォン・リー

 血気盛んなのは軍人だけではない。第9話では、エゥーゴの出資者であるウォン・リーからカミーユへ、過激な“修正”が加えられた。

 ハロをいじっていたせいでミーティングに遅刻したカミーユ。それを見たウォンは「そのガキ 待ちな」と言うと、いきなりビンタをかまし、倒れたところに間髪入れずローキック。「暴力はいけませんよ!」と抗議するカミーユに「甘ったれるな!」と再びキック。カミーユも負けじとウォンに殴りかかって一発入れるが、殴り返されダウン。

 それでも言い訳を続けるカミーユに、ウォンはローキックを入れてから顎を蹴り上げた。これにはさすがのカミーユも白目をむく。しかし「つべこべつべこべと なぜ“ごめんなさい”と言えんのだ!」と、続けるウォン。倒れ込んだまま、カミーユは「暴力は、いけない」と訴え続けるが、とどめに腹を蹴られて失神した。

 目を覚ましたカミーユは、あの場にいながら黙って立ち去ったクワトロ・バジーナとエマ・シーンに抗議するが、クワトロからは逆に叱られ、エマからは追加でビンタを食らう羽目に。さらにエマは第10話で、この一連の暴力を「修正」=「殴って気合いを入れることよ」とカミーユに教えた。暴力が正当化される過程が実によく分かる。

■殴られたあとのセリフも見どころの一つ…クワトロ・バジーナ

 エマから教わった“修正”をカミーユがさっそく実践したのは、第13話。

 自分がシャア・アズナブルだと認めようとしないクワトロを、「歯 食いしばれ! そんな大人 修正してやる!」と殴り飛ばす、あの有名なシーンだ。殴られたクワトロは「これが若さか…」と、涙をキラリと光らせる。

 さらに第34話でも、強引に出撃して戦死した(と見せかけて敵に寝返った)レコアの部屋で、カミーユはいきなりクワトロを殴りつけた。

 レコアとクワトロは一応恋人関係にあったものの、何気に恋愛体質なレコアとは対照的に、クワトロはあくまでドライに接していた。カミーユはそのことでクワトロを責めたのだ。これに対しクワトロは、カミーユの姿越しにレコアのサボテンを見て「サボテンが、花をつけている……」と、文学的な返しをした。

 一回り近く下の若者に二度も殴られ、一度目は失った若さを思い、二度目は自分が傷つけた女性を思って感傷に浸るクワトロ。ジェリドほどではないが、”なんかちょっと残念な人”感を感じてしまうのは、筆者だけだろうか……。

 

 殴り、殴られ、蹴り、蹴られ……現在の感覚ではあまりに現実感がなさすぎて、一瞬「ネタじゃないのか」と思ってしまうほど。それだけ平和な世の中になり、人類は未来に向けてほんの少しでも進歩しているのだと、そう信じたいものだ。

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