昭和54年(1979年)から始まった『機動戦士ガンダム』シリーズ。女性や子ども相手に大の男が平気で手をあげるシーンがたびたび描かれるが、とくに『機動戦士Zガンダム』ではそれが顕著であったように思う。今なら物議をかもしかねないシーンでも当時難なく受け入れられたのは、戦時下という特殊な事情もあったが、昭和という時代背景も大きかっただろう。今回は、昭和を彷彿とさせる『Zガンダム』の“鉄拳シーン”を女性目線で振り返ってみた。令和の現在とは環境が全く異なることは承知の上、少々毒舌かもしれないがご容赦いただきたい。
■気性が荒すぎる主人公!? …カミーユ・ビダン
鉄拳シーンは第1話で早々と描かれる。主人公のカミーユ・ビダンが、ティターンズのジェリド・メサから「女の名前なのに なんだ男か」と言われたことに腹を立て、民間人立ち入り禁止区域に入ってまでジェリドを殴り飛ばすのだ。
それでも気が済まず「カミーユが男の名前で なんで悪いんだ!俺は男だよ!」と叫んで重ねて殴りかかろうとしたうえに、止めに入ったほかの軍人たちにも立て続けに腹パンを食らわせる。
それだけジェンダー関連でのコンプレックスが強かったのだろうが、軍人相手にいきなり殴りかかるなど気性が荒すぎるのではないか。多くの視聴者は「最初の頃のアムロよりヤバい奴が出てきた……」とザワついたことだろう。
■パッとしない男なのか? …ジェリド・メサ
カミーユにいきなり殴られたジェリドは、その後、軍人たちに押さえつけられ身動きできないカミーユの顔面を蹴り飛ばす。先に手を出したのはカミーユとはいえ、ちょっと大人げない気もする。
さらに第6話では、ライラ・ミラ・ライラに“甘ちゃん”と揶揄されたジェリド。ライラのあとを追いかけて殴りかかったが、逆に顔面にドロップキックを食らった。
やっていることはカミーユと同じなうえに、相手は女性、しかも失敗して返り討ち。どこまで行ってもパッとしない気がする……。
■今なら即パワハラ案件かもしれない…バスク・オム
初代ガンダムでは、アムロ・レイを殴って「親父にもぶたれたことないのに!」という名言を引き出したブライト・ノア。逆に『Zガンダム』の第2話では、ティターンズ軍人からボコボコにされる。
ティターンズのやり方を非難したブライトに対し、バスク・オム大佐が「一般将校は黙っていろ!」とパンチ。それでも抗議を続けると、今後はカクリコン・カクーラーが「大佐は黙れと言っている!」とビンタ。
さらに、どさくさに紛れてモブキャラも「一般将校は黙っていろ!」とパンチ。ブライトが倒れると、今度は寄って集って踏みつける。“鉄拳”というより、もはや集団暴行だ。
このようにバスクが部下を殴るのは日常茶飯事のようだ。第41話でも、ティターンズに寝返ったレコア・ロンドの忠誠心を試すためコロニーに毒ガスを注入する作戦を指示し、それに抗議した彼女を思い切り殴っている。軍人とはいえ相手は女性。多少は手加減してもよさそうなものだが、さすがバスク、何の躊躇もなく顔面をグーで行った。
生意気な部下はとりあえず殴る。パワハラの手本のような人だ。