■赤ん坊ゆえに歯止めが利かない無邪気なスタンドパワー!?『ジョジョの奇妙な冒険』静・ジョースター
1986年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されている、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』には、“スタンド”と呼ばれる特殊能力を持つキャラクターが多数登場し、それぞれの個性的な能力を駆使して戦う。そのなかでも“透明”になれる力を作中で発揮したのは、第4部に登場する静・ジョースターだ。
さまざまな年代のキャラクターたちがいるなかで、静はなんとまだ言葉も喋れない赤ん坊として登場した。出生や両親など一切が謎に包まれており、主人公・東方仗助らに偶然拾われ、保護されることとなった。
彼女の持つスタンド、“アクトン・ベイビー”は自分の体はもちろん、近くにある物体をも“透明”にすることが可能。肉体や物体の“見た目”に作用する以外の効果はとくになく、戦闘向きの能力とは言い難い。
ほかの“スタンド”に比べると非常にシンプルな能力だが、作中では保持者である静が幼すぎるがゆえに能力を制御できておらず、思わぬ騒動を引き起こすこととなった。
なにせ静は登場時から常時この能力を発揮しており、その影響で肉体は終始透明で、少し目を離すとどこに行ったのかが分からなくなってしまう。
彼女を保護した仗助らも服や帽子を身につけさせたり、化粧をさせることでなんとか対策を練るのだが、静はちょっとした“ストレス”をきっかけに能力を暴走させてしまい、周囲の物を無差別に“透明化”させるのだ。
静には敵意や悪意といった感情は一切なく、赤ん坊としての“本能”のみを頼りにこの能力を操作しているため、他者がコントロールすることはほぼ不可能なことが、なんとも厄介だ。
他者を傷つけるわけでも、なにかを破壊するわけでもないスタンド能力だが、本体が“赤ん坊”というだけで、思わぬ騒動を巻き起こしてしまった、なんとも意外性に溢れるキャラクターである。
“透明”になる能力というと、バトル漫画などではどこか地味な印象すら抱きがちだが、作品によってその表現方法や活用法が異なるのは、実に面白い点だろう。
あるときは隠密行動のために、あるときは本能のままに……能力の内容がシンプルであるがゆえに、その“魅せ方”にこそ漫画家のセンスが光る能力なのかもしれない。